頭痛 Haedache revised on 2018.5.30

慢性の頭痛は我慢しないで早めに受診しましょう。
頭痛の回数や痛みの程度は人それぞれですが、日本人の4人に1人は頭痛もちとのデータがあります。

通常の痛み止めではきかない激しい痛みなど、専門の治療薬がありますので、あきらめないで、まず御相談ください。

慢性頭痛は主に3種類あります。

１.筋緊張性頭痛 tension-type headache
　重苦しくて、締め付けられるような痛みです。
後頭部から首筋にかけて痛みがあり、長いときは1週間以上痛みが続くこともあります。痛みの程度はあまりひどくはないのですが、いつまでもすっきりしない痛みが続きます。なかにはめまいを伴う人もいます。
マッサージや入浴が効果的ですが、鎮痛薬以外に、筋肉の緊張をほぐす作用のあるお薬を使うことがあります。
眼精疲労や歯の噛み合わせも影響します。

２.片頭痛 migraine
　ズキンズキン・ガンガンする痛み。親子で遺伝することもあります。
頭の片側のこめかみから目のまわり、ひどいときは頭全体が「ズキンズキン」と脈を打つようにいたみます。体を動かすと痛みは余計にひどくなります。月に1,2回から多いときには週1回以上、繰り返しおこります。数時間から3日間もの長い間頭痛が続くこともあり、仕事はもちろんのこと身の回りのことさえもしんどくなります。頭痛の前触れとして、視界にチカチカした光が現れ、まぶしくて仕方なくなることもあります。なかには頭痛だけでなく吐き気がしたり、実際に吐いてしまう人もいます。ちなみに生理中は比較的楽です。

片頭痛のメカニズムには諸説ありますが、ストレスなどの刺激が誘引となって、三叉神経から痛み物質が放出されます。また、血液中にセロトニンという化学物質が大量に放出されると、頭の血管が収縮します。（このときキラキラした光が見えるという前兆がある人もいます）その後、セロトニンが急激に減少し、今度は逆に頭の血管が拡張し、拡張した血管から血液の成分が染み出て血管の周囲に炎症が起こります。この刺激が血管の周りを取り巻く三叉神経を通って「痛み」として認識されます。

通常痛みに対して使われる「鎮痛薬」は、痛みの信号を伝わるのをとめるたり、痛みのもとを作りにくくして、痛みを感じにくくしますが、片頭痛の場合、痛みの原因に直接作用する、専用の薬があります。 原因となる血管に作用して、異常に拡張した血管を収縮させ、三叉神経に作用して痛みの物質が出るのを防いで、血管の拡張と炎症を鎮めます。

片頭痛の予防
月に2回以上の発作がある場合、βブロッカー、Ca拮抗薬や抗てんかん薬、三環系抗うつ薬など使うこともあります。

付）月経に関連する片頭痛

前兆のない偏頭痛のうち、頭痛は月経の開始2日前から月経3日目までのみに生じ、月経周期3回中2回以上で認め、月経周期中のその他の時期には認めない。

３.群発頭痛 cluster headache　およびその他の三叉神経・自律神経性頭痛　Trigeiminal autonomic cephalalfgia TACs
　『眼をえぐられるような痛み』、と表現されます。 男性に多いといわれています。ストレスや飲酒が誘引となって、いつも決まった片側の眼の奥に強烈な痛みが出現します。就寝中に多く出現します。痛みのある側の眼の充血、涙や鼻水も出ます。15分から3時間程度続くことがあります。

治療は片頭痛と同じでスマトリプタン製剤が有効です。

４.慢性片頭痛 chronic migraine

A 頭痛（緊張型または片頭痛あるいはその両方）が月に 15 日以上の頻度で３ヵ月以上続く *

B 　1.1 前兆のない片頭痛の診断基準をみたす頭痛発作を 少なくとも 5 回は経験している患
　　者におこった頭痛。

C 　少なくとも 3 ヵ月にわたり，次の C1 または C ２あるいはその両方を満たす頭痛が月に 8
　　 日以上ある．すなわち，前兆のない片頭痛の痛みの特徴と随伴症状がある．

1 . 　以下の a 　〜　 d の うちの少なくとも 2 つを満たす。
　　　　(a) 片側性
　　　　(b) 拍動性
　　　　(c) 痛みの程度は中程度または重度
　　　　(d) 日常的な動作（歩行や階段昇降など）により頭痛が増悪する、あるいは頭痛のため
　　　　　　に日常的な動作を避ける．そして，以下の　 a または b の少なくともひとつ。
　　　　　　　　 (a) 悪心または嘔吐（あるいはその両方）
　　　　　　　　 (b) 光過敏　および　音過敏

2. 　上記 C １の頭痛発作に進展することが推定される場合にトリプタン　又はエルゴタミン
　　　　　製剤による治療により頭痛が軽減する。

D. 　薬物乱用が存在せず，かつ，他の疾患によらない

５.薬物乱用頭痛→薬物過量使用による頭痛　medication-overuse headache (MOH)

A 　頭痛は１ヵ月に 15 日以上存在する。

B 　 1 種類以上の急性期・対症的治療薬を 3 ヵ月を超えて定期的に乱用している。

　　　 1. 　3 ヵ月以上の期間，定期的に１ヵ月に 10 日以上エルゴタミン，トリプタン，オピオイド，
　　　　　 または複合鎮痛薬を使用している。

　　　2. 　単一成分の鎮痛薬，あるいは，単一では乱用には該当しないエルゴタミン，トリプタン
　　　　　　，オピオイドのいずれかの組み合わせで合計月に 15 日以上の頻度で 3 ヵ月を超え
　　　　　て使用している。

C　 頭痛は薬物乱用により発現したか，著明に悪化している。

薬物乱用頭痛は，原因薬物の服用中により １〜 ６ヵ月間は 70 ％ほどの症例で改善が得られるとの報告が多いですが，その間に約 40 ％が再び薬物乱用を起こしてしまうといいます。日ごろから薬を多く使いすぎないように、予防薬を内服し、エルゴタミン製剤，鎮痛薬，トリプタン薬などの使用頻度が 月 10 日以上 にならないように気をつけましょう。

参考文献　国際頭痛学会誌 Cephalalgia 　2006年6月
　 　　　　　　The International Classification of Headache Disorders 2nd Edition （ ICHD-II ）　2004年

参考文献　国際頭痛分類3版β版　2013年6月
　 　　　　　　The International Classification of Headache Disorders 2nd Edition （ ICHD-II ）　2004年

http://www.jhsnet.org/guideline_GL2013.html

６.抑うつ性頭痛　depressive headache (　Seymour Diamond, M.D. )

内科的に説明のつかない慢性的な頭痛の原因として、ストレスや抑うつ気分が関係していることがあります。クロミプラミン（商品名アナフラニール）などの抗うつ薬が有効です。

７.身体化障害　somatization

３０歳以前に始まり、何年にもわたって持続する多症状性の障害。4つ以上の痛み（頭痛、腹痛、背部痛、胸痛、関節痛、四肢の痛み、月経痛、性交痛、排卵痛）、2つ以上の胃腸症状（嘔気、膨腸、下痢、数種類の食べ物に対する不耐症）、1つ以上の偽神経症状（嚥下困難、喉の塊、失声、複視）、古典的にはヒステリー、ブリケ症候群として知られている。治療は短時間定期的診療、行動療法、薬物は最小限とする。

参考　慢性頭痛の診療ガイドライン（日本頭痛学会2013）

薬物療法

１．中枢性筋弛緩薬
ミオナール(塩酸エペリゾン）　骨格筋の緊張緩和　1日3回　14日間内服 薬価　24円/錠

　

２．感冒薬配合剤
ペレックス(サリチル酸アミド＋アセトアミノフェン＋カフェイン＋マレイン酸クロルフェニラミン ）　骨格筋の緊張亢進緩和　1日3回　14日間内服 薬価　6円/１ｇ

　

３．非ステロイド性抗炎症薬
ロキソニン(ロキソプロフェンナトリウム）　下熱、鎮痛効果が強い。プロドラッグで胃への負担が少ない。　1日3回屯服。薬物乱用頭痛に注意。薬価　23円

　

４．スマトリプタン製剤（５−HT1B/1D agonist)
イミグラン (sumatriptan)　50ｍｇ　片頭痛および群発性頭痛（注射のみ）に有効。血管収縮作用を有するため高血圧や虚血性心疾患　頭痛時に屯服（50mg）。初回50mgで無効の時は次回から100mg服用。投与間隔2時間以上（半減期2.2時間）。1日200mgまで。薬価　933円（50mg）

　

マクサルト(rizatriptan benzoate)　10ｍｇ　偏頭痛に有効。副作用はイミグランと同様。。初回10mgで無効の時は次回から20mg服用。投与間隔2時間以上。1日20mgまで。薬価　934円（10mg）

　

アマージ(naratriptan hydrochloride)　2.5ｍｇ　偏頭痛に有効。副作用はイミグランと同様。効果不十分のときは4時間以上あけて追加可（半減期5.1時間）1日５mgまで。薬価　900円（2.5mg）

　

５．抗不安薬
ソラナックス(alprazolam）　　１〜３回屯服。睡眠前に服用することで深い睡眠を得ることができる。長期間続いていた薬物抵抗性頭痛がソラナックスにより軽快する例がある。　薬価　11円(0.4ｍｇ）

　

６．抗うつ薬
アナフラニール(clomipramine hydrochloride）　　睡眠前10〜30mg　副作用は便秘、口渇、眠気。慢性疼痛症候群にも有効。薬価　10円(10mg)

７．漢方
五苓散（ごれいさん）　特に血圧の低い方、低気圧で起こる頭痛に有効です。　１日18粒で1ヶ月846円（3割負担）/p>

診療方針

突然出現した激しい頭痛については、髄膜炎、くも膜下出血、緑内障、化膿性副鼻腔炎（これらの頭痛を２次性頭痛といいます）を、吐き気を伴う頭痛においては、頭部MRI検査をご紹介いたします。

上記の薬物の効果を試すと共に頭痛の引き金となるような生活習慣を改善するようご説明します。

アルコール
食べ物（チーズ、チョコレートなど）
空腹（朝食を抜くこと）
不規則な睡眠
心身の疲労
低血圧
高血圧
運動不足
その他、月経周期、気象（気圧変化）も片頭痛に大きく影響を及ぼします。

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