マイコプラズマ肺炎

永田町周辺でマイコプラズマ肺炎の患者さんが散見されます。ご注意下さい。

マイコプラズマ肺炎は、ふだん健康な若年成人や年長児に多い肺炎です。'異型肺炎＝普通とは違う肺炎'とも呼ばれます。家族内・学校・職場内など集団生活で感染しやすいこと、頑固な咳が長引きやすいことが特徴です。「Mycoplasma pneumoniae」という病原微生物の感染によって、主に患者の咳で飛沫感染します。多くの場合、痰を伴わない乾いた感じの咳が主症状で、数週間も続くこともあります。一般的な風邪（ウイルス性上気道炎）の場合、数日すると症状が治まってきます。一週間以上経過しても症状がよくならない時や、しつこい咳が続く場合は、積極的にマイコプラズマ感染を疑わねばなりません。胸部レントゲン所見や、血液検査でマイコプラズマの抗体の上昇が認められた場合、診断が確定します。他の細菌性肺炎とは違って症状が軽く、病初期に発熱はするものの、成人は入院を必要とせず外来通院で治療可能な場合が多いとされていますが、症状にはかなり個人差があります。全身状態が不良の場合は、一週間前後の入院が必要な場合もあります。潜伏期間は約２〜３週間、マイコプラズマ肺炎の発生は年間を通して見られますが、流行は秋が多いようです。マイコプラズマ肺炎に対する免疫は、一生続くものではないので注意が必要です。

マイコプラズマは、ウイルスと細菌との中間に位置する微生物です。ウイルスのように他の生物の細胞の力を借りて増殖するのではなく、細菌と同様に自分の力で増殖します。細菌に見られる細胞壁を持たないために、細菌感染症の第一選択として使われる、細菌の細胞壁の合成を邪魔することによって効く種類の抗生物質（ペニシリン系、セフェム系など）は無効です。マイコプラズマ肺炎に有効な抗生物質（マクロライド系、テトラサイクリン系抗生物質､ニューキノロン系抗菌剤）による治療は、症状の期間を短縮し、治癒を早める効果が期待されます。

マイコプラズマ肺炎に対するワクチン（予防接種）は今のところありません。流行期には人ごみはできるだけ避け、うがいと手洗いを励行してください。乾いた激しい咳が長引く場合は、マイコプラズマ肺炎を疑って、早めに医療機関を受診することをお勧めします。