東京都千代田区永田町2-11-1 山王パークタワー25階 tel 03-3580-5001 理事長 渡邉基樹 院長 鈴木努
「親切に、正確に、素早く」を理念としている心と体のクリニックです - - - 本院は千葉県匝瑳市にあります。
その41 EMDR (眼球運動によるストレス軽減) 2022-09-02
その39 摂取カロリーを意識しましょう 2022-07-01
その37 五月病 Spring Fever 2022-05-09
その36 パワハラ防止法 (対話の重要性) 2022-04-07
その35 花粉症時期の点眼薬の使い方(あくびのすすめ) 2022-03-03
その34 ウイルス感染後症候群 (post-viral syndrome) 2022-02-03
その33 健康診断(法定健診)後の面談 2022-01-06
その32 咳喘息について ー長引く咳に咳止めは効きませんー 2021-12-03
その31 わかってきた新型コロナの特徴とこの冬の対策 2021-11-05
その30 ぼんやり(unfocus)のススメ 2021-10-07
その29 新型コロナにかかったらどうする?どうなる? 2021-09-03
その28 今年の夏の体調管理ー夏風邪もひけない 2021-08-05
その27 「聞く(hear)」ことと「聴く(listen) 」こと 2021-07-08
その26 高齢者以外の新型コロナワクチン(PDF) 2021-06-04
その25 食後の体調不良(postprandial syndrome)(PDF) 2021-05-06
その23 リモートワークにおける目の健康(PDF) 2021-03-03
その22 ワクチン有効性の意味(PDF) 2021-02-03
その20 「ほめよう。わたしたちを。」(PDF) 2020-12-03
その19 アンガーマネジメントとストレスコーピング 2020-11-05
その18 自然免疫(innate immunity)を鍛えましょう 2020-10-02
その17 今年の冬に備えるワクチンのお話 2020-09-01
その16 低気圧に伴う頭痛 (barometric pressure headaches ) 2020-08-08
その15 新常態の働き方 The new normal for offices 2020-07-06
その12 新型コロナウイルスによる行動変容とこころの健康維持 2020-04-06
その11 新型コロナウイルス感染症について 2020-03-06
その10 花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)について 2020-02-06
その8 アルコールによる体調不良について 2019-12-05
その4 熱疲労heat exhaustion について 2019-08-08
疲れない体づくりのため、気が付いた時に体を伸ばしましょう 病気の原因は最終的に血液循環が悪くなることです。体を動かさないと、体中の筋肉が縮んで身体中の関節が固まってしまいます。そして乳酸や細胞周囲のカリウムといった疲労物質が蓄積して筋肉が働きにくい状態になります。
疲労回復には体を伸ばしたり縮めたりする体操が有効です。
体の伸ばし方1 前後屈
1) バンザイして両手ピンと上に伸ばして後屈(体を後ろにそらすこと)します。
2) 十分に伸ばしたら腕の力を抜いて、息を吐きながらお腹を膝につけるようなイメージで前屈します。
3) 膝は曲げないでピンと伸ばします。なるべく手が地面につくように胸を膝に近づけます。
4) 膝の後ろのスジ(ハムストリング)が伸びて、痛気持ちいい感じを10秒間維持します。
5) この時、脳からエンドルフィンという麻薬様ホルモンが放出され心地よく感じます。
ハムストリングの柔軟性がない方は、夜足がつったり、運動後の腰や肩の痛みを起こしやすいと言われています。オフィスでも自宅でも気づいた時にやってみましょう。とてもスッキリしますよ。
以上です。
クーラーを使用する季節の長引く咳
梅雨入り間近で、蒸し暑い毎日が続いています。 ご家庭でクーラーを付ける時期になると、毎年咳が出て長引く方がいらっしゃます。 過敏性肺臓炎といってホコリやカビに対するアレルギーが原因で、気管支炎を起こします。
咳止めは根本治療ではありません。
咳が出たら咳止めをと思う方が多いと思いますが、咳止めはコデインなど脳の働きを鈍くすることで、咳反射を抑えるもので、眠気、便秘などの副作用があります。 咳反射とは、気管支にホコリや食べ物などが入ったときに外へ排出するための反射です。気管支に炎症があると粘膜の表面が敏感になりますので、咳反射が強くなります。
長引く咳には吸入薬を使いましょう。
吸入薬は喘息患者が一生使う薬ですが、咳が長引いているときは10日間ほど使用します。成分はステロイドですが、10日ぐらいの使用ではほとんど副作用はありません。
頑固な咳でお困りの方はぜひご相談ください。長引く咳は体力を消耗します。
以上です。
夏と冬は胃腸炎のウイルスが流行りますので、食欲がなくなったり、お腹を壊す人が多くなってきます。原因のウイルスは何千種類もありますので、色々な場面で暴露されてしまいますので、予防は手洗い、うがい、そして免疫力を高めることです。
免疫力を高める生活習慣 睡眠
まとまった睡眠が取れない方は、昼に15分でもいいので仮眠をとりましょう。
免疫力を高める生活習慣 食事
発酵食品(納豆、ぬか漬け、味噌など)を取るようにしましょう。ただし、お酒は控えめに。
免疫力を高める食生活 運動
汗をかくような運動を毎日5分でいいので行いましょう。オススメはエア縄跳び(縄を持たないでその場跳び)3分、腿上げ30秒。私も毎日やってます。
免疫力を高める食生活 脱力
目を閉じて、全身の力を抜きます。ゆっくり息を吐いてお腹を凹ませます。温泉に浸かっている感覚で。
もし、かかってしまったら?
1) お腹を温めて(腹巻、掌で)、暖かい水分をこまめにとります。
2) 吐き気がある時は固形物は控えましょう(お粥、うどんはよく噛まないでお腹に入れると消化が悪い?食べる時はよく噛んで唾液を混ぜてからお腹に入れる)。
3) 便意を感じてもすぐにトイレに行かない。お腹を温めて脱力してやり過ごすように。2?3分我慢するとやり過ごせます。腸での水分吸収が促進され、早く治ります。
病院はいつ行く?
病院では原則的には乳酸菌製剤(ビオフェルミンなど)を出すだけです。 高熱が2日続いたり、気持ち悪くて水分も取れない時は点滴することもあります。 食中毒を疑う時は抗菌薬を処方します。 海外出張後は特にお気をつけください(旅行下痢症)。
以上です。
毎日朝から30度を超える毎日です。通勤だけでヘトヘトになってしまいますね。天気予報などで「熱中症heat stroke に注意しましょう」という注意がされていますが、熱中症とは、意識障害、筋攣縮などをきたし生命の危険を伴う重篤な状態です。高温下に見られる生体の変化(熱疲労)を早期に解消することが重要です。
熱疲労の症状
頭痛
高温下では身体中の血管が熱を放散するために広がります。脳内の血管も広がって頭蓋内の圧力が高くなりますので、首筋やこめかみを冷やしましょう。
めまい
脱水と血管拡張によって血圧が下がります。脳への血流が低下しますので横になって足を少し高くして、脳への血流を増やしましょう。
鼻血
血管が広がるので鼻の粘膜から出血しやすくなります。特にアレルギー鼻炎の方は出やすいです。首の後ろを冷やして、「考える人」のポーズで鼻翼の少し上をつまみます。
胃もたれ、吐き気、下痢
冷たい飲み物を飲むと胃腸の血管が収縮して、胃腸の動きが悪くなります。夏でも理想的な飲み物は白湯です。また、食事の直前や直後に大量の水を飲むと、胃酸が薄まり消化に時間がかかります。ちょこちょこ水を飲むよりは食事の1時間前に500mlぐらいまとめて飲みましょう。寝起きにもそのくらい一気に飲みます。
その他
じんましん、足のつり、口唇ヘルペス、帯状疱疹などは夏に多く見られます。
熱疲労予防
1) 十分な睡眠
2) 水分は常温で摂取する。
3) 味噌汁を毎日飲む。塩分補給が大切です。
4) 飲酒を控える。アルコールの利尿作用で脱水になります。
5) 満腹にしない。消化に使うエネルギーは体力を消耗させます。
6) オフィスでこまめにストレッチをする。伸びをするだけでもいいですよ。
病院はいつ行く?
気持ち悪くて水も飲めないような時は、水分の点滴をします。 当院ではマッサージチェアで点滴しますので、気持ちいいですよ。
以上です
ショートナップの勧め?
皆さんは毎日昼寝をしていますか?オフィスで昼なんてとんでもない、そん場所もないし、時間もない、という方がほとんどだと思います。そんな皆さんに今日はshort nap (短時間の居眠り)をお勧めします。昼寝が脳の疲労を回復させるという多くの報告があります。
NASA nap
アメリカ航空宇宙局NASAでは、宇宙飛行士に40分の昼寝を義務づけているそうです。疲労回復、記憶力、認知能力の向上が証明されています。
power nap
コーネル大学心理学教授のJames Maasは、15?20分の昼寝が睡眠負債を補うために最も適した時間と研究報告しています。眠るのは座ったままでも机に枕を載せて眠ってもいいそうです。
short nap
上の二つはグーグー眠る昼寝ですが、short napは1分以内眼を閉じるだけです。人間の脳は眼を閉じるだけで休まります。脳波では開眼時はβ波ですが、閉眼するとα波に変わり、振動数がすこし遅くなり、脳がリラックスします。
EMDR
そこで、体の力を抜いてゆっくり呼吸しながら眼を閉じてみます。できればスマホで30?60秒タイマーを設定してみてください。そしてここからが重要ですが、目を閉じたまま眼球を左右に何度も動かします。速度は1秒ずつ右、左、右、左と。これはEMDR (Eye movement desensitization and reprocessing: 眼球運動による脱感作と再構成)という精神的トラウマの治療に使われている方法です。
オフィスでも電車の中でも簡単にできますのでやってみてください。とても頭と心がすっきりしますよ。イライラしたり、不安があるときは特に有効です。私も精神科の治療で使っています。眼球筋が鍛えられて、目力もつきますよ。
以上です
成人のワクチンについて
今年のインフルエンザの流行は早くも始まっており、千代田区内の小学校では10人単位で発生しています。
A型は抗原性の大きな違いからこれまで16種類のHAと9種類のNAが報告されており、その組み合わせによってH1N1?H16N9までの亜型に分類されます(144種類)。B型は2種類の亜型があります。他にC型、D型も発見されていますが、前者は病原性が弱く、後者はウシにしか感染しないので、ワクチンの対象にはなりませんw。
今年のワクチンはA型2種類(H1N1,H3N2)、B型2種類の抗原が含まれています。当院では4000円(税込み)ですが、自由価格なのでもっと安いところもあると思います。ワクチンは感染を防ぐというよりは、感染後の症状を軽くするものであり、最近は体温が36度台のインフルエンザの方が多く見られます。
そのほか成人に必要な予防接種は、
麻疹(はしか)
水痘(水ぼうそう、帯状疱疹と共通)
風疹
ムンプス(おたふく)
65歳以上では、
肺炎球菌ワクチン(5年おき)
があります。
麻疹、水痘、風疹、ムンプス(メジャー4)は、子供の頃にかかった人でも2?30年すると抗体価が下がってきます。
特に麻疹(麻疹)と水痘(2回目は帯状疱疹として発症する)は成人後にかかると大変重症化する場合が多く、特に子供と接触する機会のある方は、4種類の抗体価を調べてみることをお勧めします。血液検査で1週間ぐらいでわかります。
もし抗体が少ない場合はすぐにワクチン接種が必要です。
現在麻疹と風疹は混合ワクチン(MRワクチン)になりましたので、どちらか一方の抗体がない方でも両方のワクチンを打ちます。4種類全部抗体がない方は3本のワクチンを同時に打ちます。
値段はホームページをご参照ください(。
注射はいくつになっても嫌なものですが、病気になれば4-5日は辛い思いをします。ワクチンは医師が必要と認めれば同時に接種できます。
追記(2021-01-29)肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス)は日本では5年おきに定期接種の案内が来ますが、接種は1度だけです。何度も打つ必要はありません。喘息や糖尿病などをお持ちの方は、それに加えて小児用肺炎球菌ワクチン(プレベナー13)を接種することをおすすめします。CDC | 厚労省ちらし(pdf)
以上です。
アレルギー性鼻炎、喘息(長引く咳)
秋は夏に繁殖したダニが死滅し、それがアレルゲンとなって花粉症のような症状が出やすいです。ブタクサ、イネ科(公園の雑草)など秋も花粉も増えます。鼻水、喉の痛み、咳などの風邪症状が長く続く時は、花粉症と同じ抗ヒスタミン薬が有効です。ステロイドの点鼻や吸入も有効です。パブロンゴールドやベンザエースなど市販薬はエフェドリンやコデインという中枢神経刺激役が入っていますので、依存性があり(アスリートのドーピングではアウト)、薬が切れてくると体調が悪くなるため、恒常的に服用している人をたまに見かけます。
漢方の風邪薬で有名な麻黄湯、葛根湯にも麻黄というエフェドリン様成分が入っていますが、天然物は合成エフェドリンと違って依存性が認められません。生薬の奥深さを感じます。
体を温めるなどと言って、アルコールを少し飲む人がいますが、アルコールは鼻、喉、気管支、胃の粘膜を腫らすので、白湯やコンソメスープを飲みましょう。
メンタル不調
夏の疲れ、天候不純、日照時間の減少及び朝晩の冷えなどで気分がすぐれない、やる気がしないなどメンタル不調が現れやすい時期です。
このような症状を予防するために、太陽の光をなるべく浴びる、短時間の運動、早起きする、部屋を片付ける、などして気分をスッキリさせるように心がけましょう。
仕事のことを考えてなかなか眠れない人は、NHKラジオ第一放送を聴きながら寝ると、知らないうちに眠ってしまいますよ。
以上です。
12月に入り、令和への改元が5月だったせいか、一層短く感じる1年でした。 連日忘年会とうい方も多いと思いますが、寒い季節の暴飲暴食はさまざまな体調不良の原因になります。
胃腸の不調(下痢、嘔吐、胃もたれ)
かぜ(喉の痛み、鼻詰まり、頭痛)
疲労蓄積(体の痛み、頭の重さ、眠気、ふらつき)
不眠(夜間の口渇、頻尿、知覚過敏)
上記の症状はすべてアルコールが原因と言っても過言ではありません。
アルコールは体の水分不足を招き(口渇)、胃酸を増やし(胃もたれ)、粘膜を腫らし(鼻閉)、疲労物質(乳酸)や痛み物質(アセトアルデヒド)、神経過敏物質(グルタミン酸)を増やします。
コミュニケーションの潤滑作用があるアルコールですが、2018年の英国医学雑誌(LANCET)にあるメタ解析(多くの臨床研究を総括的に研究したもの)が掲載されました。 その内容をまとめると、
Even one drink a day could be shortening your life expectancy. (1日1杯でもアルコールを摂取する人は、全く飲まない人に比べて寿命が短くなる)
という内容でした。「お酒の適量は1日1合まで」「適量のお酒は健康によい」などと言われてきましたが、お酒のみの言い訳に聞こえてきそうです。
あ酒を飲むと前頭葉(脳の前方)の働きが鈍り、理性から解放され気持ちよくなりますが、酔いから醒めると同時に交感神経が刺激され、脈は速く、血圧は高く、神経過敏となります。
また、1単位(日本酒1合、ビール500、ワイングラス2杯、ウイスキーダブル1杯)が分解されるまで、3ー4時間かかります。ですから、3単位以上飲むと翌朝までアルコールが残っています。最近都内で早朝の検問が行われているのは、朝の酒気帯びを取り締まっているのです。
忘年会の次の日に体調を崩さないためには、
1) 3単位以上飲まない(酔ってくるとお酒の味も分からなくなります)
2) お酒と同量の水を飲む
3) 無理に飲酒を勧めない(もう少し飲みたいぐらいで切り上げる)
4) 家で飲み直したり、締めラーメンをしない
5) 入浴し、軽くストレッチをする(血の巡りをよくして分解を早める)
などが大切です。
しっかり自己管理をして、1年の計を健やかに締めくくりましょう。
以上です。
新年おめでとうございます。本年も宜しくお願い申し上げます。
お正月は十分からだを休められましたでしょうか。 昨年末、当クリニックでインフルエンザの方は週に1ー2人でしたが、 年が明けてからは毎日2-3人の患者が発生しています。
インフルエンザの分類
インフルエンザの分類はウイルスを構成するタンパク質の特徴(抗原性) より、A型、B型、C型に分類されますが、C型は幼児期に罹患 (一般の鼻風邪として)して終生免疫ができるので、一般にインフルエンザ といえばA型とB型を指します。A型はウイルスの表面にあるタンパク質 ヘマグルチニン(HA 16種類)とノイラミニダーゼ(NA 9種類)の組み合わ せで16×9で144種類存在します。
A型は、高熱を特徴とする香港型(H3N2)、咳で始まるソ連型(2009年の 新型 H1N1)、中国で流行した鳥インフルエンザ(H5N1)などが有名です。
B型は、多様性に乏しくビクトリア型、山形型の2種類に大きく分類され ます。この2つの型は、毎年変更されるワクチンに必ず含まれているので、 ワクチンを接種すれば全てのB型に対して効果があるといわれています。
ワクチンはいつ打つか
インフルエンザワクチンは毎年前年度の流行を踏まえて検討され、 5月ごろに厚労省健康局により決定されます。今年は昨年同様、 A型2種類(香港型、ソ連型)、B型2種類(ビクトリア型、山形型)、 計4種類の抗原が含まれています。
ワクチンは感染を未然に防ぐことはできませんが、体内の免疫力を高めて インフルエンザの症状を軽くすることができます。ですから最近では、 36度台でもインフルエンザ検査陽性の場合があります。ワクチン接種後 2週間ぐらいで体内の免疫力が高まります。インフルエンザ発症のピーク は1-2月ですので、12月末までに受けていただくのが良いと思います。
高熱が出たらどうするか
診療所を受診していただくのはもちろんですが、発症12時間以内では 検査キットで疑陰性なることが多く、解熱剤をもらって帰宅していただ き、翌日熱があれば再度インフルエンザ検査をします。
インフルエンザの治療
タミフル(カプセル 5日間) 、リレンザ(吸入 5日間)、イナビル(吸入 1日)、 ゾフルーザ(錠剤 1日)があります。イナビル、ゾフルーザがよく使用され ます。どの薬も発症から48時間以降は服用してもしなくても経過に差が みられません。また、和漢の麻黄湯も免疫を高める機能があり有効です。
治ったかどうかの判定
特別な検査は必要なく、発熱した日から6日経過し症状がなければ、 7日目から出勤可能です。ただし、「咳が長引いている」「鼻水が続く」 など症状が長引いている時は、肺炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎の 合併などが考えられますので、再度医療機関を受診しましょう。
予防
十分な睡眠、栄養、適度の運動などといわれますが、20代までは免疫力が 不十分で、30代、40代は子供と接する機会が多く、非常にかかりやすい と思います。ワクチンを毎年打って症状を軽くさせること(感染は予防 できない)、うがい、手洗いなどよくいわれることでしょうか。 もしかかってしまった場合は、「疲れが溜まっているので休むように」と いう神様のご配慮と思って、ゆっくり体を休めましょう。
流行のピークは2月ですので、自己管理を怠らず厳しい季節を乗り越えましょう。
以上です。
スギ(1月中旬から4月)、ヒノキ(4〜5月)、ブタクサ(9〜11月)、イネ(公園の雑草7〜11月)などが主な原因となります。1年中症状を認める通年性アレルギー性鼻炎はハウスダストアレルギーが原因です。
症状
くしゃみ、鼻水、目の痒みが有名な症状ですが、次のように多彩な症状が知られています。
・微熱
花粉症は英語でhay fever(枯れ草熱)といい、微熱が出ることがあります。
・アレルギー性咽頭炎
喉の痛みが続きます。
・アレルギー性皮膚炎
目の周りは頬、口の周りがかぶれます。
・アレルギー性気管支炎
乾いた咳が続きます。
治療
アレルギーのもとが白血球と結合すると、炎症物質(ヒスタミン、ロイコトリエンなど)が放出されて、組織の血管が広がり赤く晴れてしまいます。
1) ステロイド点鼻薬(第1選択)
薬局で売っているものはステロイド点鼻薬ではなく血管収縮剤です。これは粘膜の血管を縮めてすぐに鼻詰まりが取れますが、10分ぐらいしかもちません。何度もやっていると粘膜が固く(線維化)なりますのでお勧めできません。
病院で処方されるステロイド点鼻は、速効性はありませんが、4〜5日すると鼻がすっきりするのがわかると思います。ステロイドというと抵抗を示す方がいますが、粘膜のステロイドは粘液で洗い流され、体内の吸収が少ないので安全です。
2) 抗ヒスタミン薬(第2選択)
ルパフィン、ディレグラ、デザレックス、ザイザル、タリオン、アレジオン、クラリチン、アレグラと色々出ています。どれも効果は変わらないと思います。後ろ3つは市販されています。
3) 抗ロイコトリエン薬(第3選択)
シングレア、オノンなどは抗ヒスタミン薬薬と合わせて使用します。
4) 経口ステロイド(第4選択)
症状が治まらないときは数日間ステロイドを内服します。
5) SLIT(Sublingual liquid immune therapy)舌下免疫療法
4週ごとに3?5年通院しなければなりません。しかも1回に1種類の花粉症しか対応できません。
6)その他鼻粘膜のレーザー、ラジオ波でによる焼灼血液検査
自己負担4000円程度で基本的なアレルゲン(スギ、ヒノキ、ダスト、イネ、ブタクサ)の反応がわかります。
非アトピー性鼻炎
特別なものにアレルギーはないが、寒暖差、疲れなどにより粘膜が晴れることがあります。治療は同じです。
以上です。
2019年12月2日中国武漢で原因不明の肺炎が報告され、2020年1月7日に新型コロナウイルス感染症と判明しました。その後感染が広がり90000人以上の感染者と3000人(3月4日WHO発表)以上の死者が出ています。
前回の健康一口メモ(2月7日に発行)の時点では、2月3日にダイアモンド・プリンセス号が大黒ふ頭に入稿した直後で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の国内発生はなく、あまり危機感がありませんでした。ところが、2月17日に国内発生(バスの運転手)してから続々とヒトーヒト感染が起こっており、2月27日に政府より全国の小中高校の休校が要請されてから、感染症に対する不安感が一期の広まっています。
3月5日現在、国内の累積感染者(クルーズ船706人)は305人(死亡6人)で中国、韓国、イタリア、イランに次いでいます。これら4カ国は米国疾病管理予防センター(CDC)から、レベル3(不要不急の渡航禁止)が、日本はレベル2(感染予防の徹底、日本からの入国者は14日間健康監視)となっています。
日本から各国への入国制限も発表されており、外務省によるとインド、モンゴル、イスラエル、イラクなど多くの国、地域で日本からの入国が禁止されています(外務省サイト)。
一般のコロナウイルスは代表的な風邪のウイルスで、無治療でも3?4日で完治しますが、新型コロナウイルスは5日以上高熱が続き、肺炎を起こしやすい特徴があります。国立感染症研究所所によるとダイアモンドプリンセスの全例検査では、3711人中619人が陽性でしたが、うち300人が無症状だったとのことです。無症状の方も入院措置がとられましたが、CT検査を行なうとほぼ全員に肺炎の影を認めたのことです。はとんどの肺炎は無治療で自然に治ったとのことですが、PCR検査でウイルスが陰性になったあとでも。肺炎が進行して重症になる場合があり注意が必要です。
中国の発表によりコロナウイルスの特徴がわかってきました。
Report of the WHO-China Joint Mission on Coronavirus Disease 2019 (COVID-19), 16-24 February 2020
●感染力はインフルエンザより弱い。
濃厚接触者2800人から25000人を追跡して、感染したのは0.9?4.8%。同居していてもうつらないことが多い。
●感染者の死亡率は0.7%、インフルエンザでは0.01%。
現在重症者のみ検査されているので、実際はもっと低いと考えられます。
●治療薬がない。
現在新型インフルエンザ治療薬のアビガンやエイズ治療薬のカレトラの治験が進行中。
●19歳以下は軽症が97%。死亡率は0.2%。
ほとんどが自然に治りますが、急速に吸不全をきたす音あり。
●PCRの擬陽性(病気ではないのにウイルスが陽性となる)が多い。
ですから、軽症の人に検査を広げると、多くの擬陽性患者が出て重症者の治療が滞ることになります。
●ウイルスに数種類の亜型があることがわかってきました。
軽症型と重症型で、武漢で流行したものは後者です。国内で検出されているウイルスがどちらなのかは検査されていません。
我々がとるべき行動
●感染症の標準予防(手洗い、うがい、マスク、人混みを避ける)を徹底する。
●熱が出ても自制内(辛くない)であれば受診しない。熱が4日以上続くか、咳がひどい時は最寄りの保健所に連絡してから指示に従う。
●事業継続計画(BCP)の策定と管理(BPM)を行なう。
今後の見通し
3月6日からウイルスPCR 検査が保険適応になりました。これからは指定医療機関が保健所を通さずに直接検査できるようになります。内服薬(アビガン、カレトラなど)の保険適応やワクチンの開発も進められています。指定感染症が解除されれば、インフルエンザと同様になるでしょう。
(2020-05-02追記:PCR検査は保険収載されたものの、未だに一般医療機関では施行できません。アビガンは2014年に新型インフルエンザに承認されているにも関わらず、一般医療機関のみならず感染症指定医療機関でも観察研究に登録していないと使用できません。アビガンに先駆けて昨日米国Gilead Sciences社のレミデシビル(注射薬)が日本で認可されると報道がありました。先週PMDA(独立行政法人 医薬品医療機器開発機構)にアビガンの適応外使用(新型インフルエンザの容量を新型コロナウイルス感染症に医師の判断で患者の承諾を得てしようすること)を提言しました。)
PCR検査は擬陽性が多いので、治療対象は、4日以上の熱が続く人、肺炎がある人などに限定しないと医療資源が枯渇することになりますので、各人が正しい受診行動をとることが大切です。
以上です。
桜も散り始め、世間は新型コロナウイルスによる自主ムードが広がり、なんともスッキリしない気分の毎日です。
在宅勤務をされている方も多いと思いますが、体調はいかがでしょうか。
通勤時間がなくなり、体の疲れは少なくなっている反面、直接人と話す機会が減って、仕事が非効率と感じる人も多いと聞いています。また、オフィスは仕事をする場所、自宅はのんびりする場所などという習慣が抜けないためか、家だとあまり集中できないという声も耳にします。スポーツジムも閉店いるところが多く、運動不足になりがちです。
小中高は5月6日まで休校の予定で、お子さんの過ごし方のご心配もあると思います。
テレビをつけると朝から晩までコロナ関連のニュースで世界中のメディアが悲惨な映像を流しており、それらを見るたびに不安な気持ちがかき立てられます。外出制限と相まって、人々の心に疲れが溜まりやすい状態です。今回は新型コロナウイルス感染症の流行による行動変容(生活の変化)とこころの健康維持について書きます。
新型感染症流行時の行動変容とストレス
1) 自分や離れて暮らす家族の健康に関する不安
2) 生活リズムの乱れによる不眠、集中力低下
3) 氾濫する情報へのとらわれ
4) 子供の日常生活に関する不安
5) 仕事に関する不安
こころの健康維持に必要なこと
1) ポジティブに考える
過去、どんな新型感染症も克服されてきた。 簡易検査や治療薬、ワクチンの開発の目処はついている。
インフルエンザは毎年2000万人が罹患し2000人以上が死亡(死亡率0.01%)。コロナは現在77人が死亡(0.2%であるが検査が保健所を通さずに行われれば罹患者は多いので死亡率はさらに下がる。
2) 早起きをする。ストレッチやジョギングをして体をなまらせない
3) 信頼できる情報のみを参照する
NHKのサイトがわかりやすい。
4) 子供と正しい知識を共有する。生活に過干渉にならず、子供の自主性を尊重する。
5) 将来のことばかりに囚われず、今できることを行う。
暗いニュースにつられて気分が落ち込むと免疫力が下がります。 とにかく笑うことが大切です。 家族でテレビゲームをやったり、お笑い番組を見たりするのもいいでしょう。
会社においても、すでに十分なBCP対策は講じていると思います。 先の事ばかり考えず、今自分が何をするべきなのかを意識して集中力を高めましょう。
以上です
新緑が目に映えるようになってきましたが、皆様は在宅勤務の中いかがお過ごしでしょうか。緊急事態宣言が5月末日まで延長され、皆さんの自粛疲れもピークに達しているのではないでしょうか。
昨日は、レムデシビルという米国発の薬が認可されましたが、日本初のアビガンがまだ認可されません。両者ともRNA依存型RNAポリメラーゼ阻害薬と言って、ウイルスが細胞内に侵入した後増殖するために使われる酵素をブロックします。ですからウイルスが侵入したらなるべく早く使用したい薬です。
ところが現在治療法を示している日本感染症学会では、「60歳以上の患者で酸素投与が必要になったら使う」事を推奨しているため、なかなか薬の効果が発揮されません。現在医師会から軽傷者にアビガンが使用できるよう医師会から学会に再三提言しています。(2020-5-30追記:2020年5月17日、日本医師会 COVID-19有識者会議が「科学的エビデンスが整うまで、治療薬として認可すべきではない」と緊急提言。4月28日の横倉日本医師会会長の定例会見で、「アビガンの高齢者・ハイリスク患者への積極的投与を自民党に要望した」ばかりだったが。。。)
アビガンという薬は2014年、新型インフルエンザに対する薬として既に治験も終了し認可されている薬です。「初日は1600mgを1日2回、2日目から600mgを2回で4日間」と決まっていますが、新型コロナウイルス感染症には、何故か重症熱性血小板減少症(SFTS)に準じて「1800mgが2回、2日目から900mgが2回で計14日間」と投与量が増えているのです。このため認可に時間がかかっています。
新型コロナは若い人でも急に重症化することが知られており、軽傷のうちからアビガンを開始することが必要であり、患者さんもその方が何もしないで自宅、ホテルに待機するよりも安心だと思います。
東洋経済サイトの国内感染症状況を見ますと、国内の新規感染者数は減少傾向ですがまだ400人以上認められます。既に「感染拡大期」を通り越して「感染蔓延期」となっていますので、指定感染症は解除してインフルエンザ同様5類感染症にしていただきたいところですが、軽症者への治療が確立していないので、悩ましいところです。
今回の一口メモは私見を記させていただきました。私も治療方針が定まらず、自粛一辺倒の専門家会議や重症治療に偏った学会の方針に大いなるストレスを抱えています。
私のストレス解消方法は愛犬ハチ(7歳)との散歩です。
以上です。
新型コロナウイルスの話題が続きましたので、今回は健康管理についてまとめてみました。
労働安全法により事業主は労働者に雇い入れ時と年に1度の定期健康診断を義務付けています。費用は会社負担です。
それ以外に健保組合などの助成金を利用して、個人的に予約をして人間ドックを受ける方もいると思います。胃カメラ、大腸カメラ、腹部超音波、マンモグラフィー、脳ドックさらにはCTによる内臓脂肪などをオプションにつける方もいます。ところが最近は過剰な検査が問題になっています。
今日のテーマは、「健康診断のオプションはどの程度つけたらいいのか」 という話です。
まずがん検診についてです。現在わが国で広く行われている5部位の 癌検診(胃・大腸・子宮・乳房・肺)。そのうち無作為比較試験で有効性が認められているのは、大腸がん(便潜血)と乳がん(マンモグラフィ)の検診ですが、その効果(死亡率減少)は13〜36%と微々たるものです。
最近問題になっているのは、以下のようながん検診の不利益です。
1)偽陽性
検査の精度は100%ではありませんから、がんではない人に「がんの疑いあり」という「偽陽性」と呼ばれる結果が出ることがあります。
2)レングス・バイアスド・サンプリング 進行が遅いがんは早く見つかるが、進行の早いがんは年に一度の検診から漏れてしまう。進行に20〜30年かかるものを早期に見つけてしまうと、もしかしたら死ぬまで問題にならなかったものまで治療することになります。一方で「毎年検診を受けていたのになんで見つからなかったんだ」と悩むことになります。
上記のような、「過剰診断」「過剰治療」が問題になっています。見つけなくてもいい癌を見つけて、必要のない治療が行われるという意味です。賢明な国民はそのようなことを認識しているのかどうかわかりませんが、がん検診受診率は肺がん検診を除いて50%未満です。以下に厚労省が提唱するがん検診と男女別の受診率、米国の基準を示します。米国では検診対象者の年齢に上限があります。
◯肺がん (男51%、女41%)
(厚労省)40歳以上。毎年胸部X線および喀痰細胞診
(米国)55歳から80歳で、ハイリスク男性患者(喫煙20本20年以上、禁煙して15年以内、)にLDCT(Low Dose CT 線量が10分の1 (1 mSv)検査を行う。
◯胃がん (男46%、女35%)(男51%、女41%)
(厚労省)50歳以上。バリウム検査か上部消化管内視鏡、2年に1度、ABCD検診でAの人は不要。
(米国)特に定めなし。
◯大腸癌がん (男44%、女38%)(男51%、女41%)
(厚労省)40歳以上。毎年便潜血検査
(米国)50才以上75歳以下の人は毎年便潜血検査。大腸ファイバーは異常がなければ10年に一度で十分。
◯乳がん (受診率45%)(男51%、女41%)
(厚労省)40歳以上。2年に1度マンモグラフィー(触診、視診は推奨しない)
(米国)50歳から75歳まで2年ごとにマンモ. 家族歴のある人は40代前半で行う。
◯子宮がん (受診率42%)(男51%、女41%)
(厚労省)20歳以上子宮頸部の細胞診および内診、2年に1度
(米国)21歳以上で始め、陰性であれば3年後。30から65歳の人も検査を行い陰性であれば、3年後に行う。HPV テストが陰性だった場合は5年毎に行う。
有効性が否定的な健診
<腫瘍マーカー> 擬陽性が多い。腫瘍の治療経過の指標とし用いる。
<消化管バリウム造影> 粘膜の色合いが不明であり、バリウムによる便秘や胃もたれが多い。X線被爆が問題となる。
< CTによる内臓脂肪> X線被爆が問題となる。
<PET> 解像度が低く、偽陽性、偽陰性が多い。放射線被爆。高額。
結論
以上のことから考えますと、絶対に受けたほうがいい癌検診はなさそうです。がんは細胞内の遺伝子が傷つくことにより、細胞が異常に増殖することで発生します。遺伝子を傷つけることとしては、ストレス、運動不足、偏った食事、喫煙、飲酒などがありますので、生活習慣の改善が一番の予防につながります。ただし、遺伝するがんが知られていますので、そのような場合は定期的な検診が必要です。
以上です。
参考
厚労省ウェブサイト
臨床と研究 2019;96:884-8.
Choosing Wisely (米国内科学会)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行(pandemic)により、我々の生活がガラリと変わってしまいました。pandemic後の新しい生活様式を新常態(new normal)とかポストコロナなど表現されますが、元々は2007年のリーマンショック後の経済活動変化を指す言葉だったとのことです。
その特徴は、1)ソーシャルディスタンス、2)3密の回避、3)テレワーク、4)オンライン、5)キャッシュレスなどに代表される生活様式です。先日もディズニーランドが4ヶ月ぶりに開場されましたが、入場を待つ人々は地面の足跡マークに間隔を開けて並び、ディズニーキャラクターもソーシャルディスタンスを守って踊っていました。
COVID-19の国内発生は2月中旬ですが、駅のホームから「時差出勤やテレワークを努めるよう」アナウンスされていました。そのころは、テレワークなんて無理だろう、などと思っていましたが、4月7日の非常事態宣言からテレワークをする企業の割合が増えてきて、中には会社には2ヶ月ぶりに来ましたなどという患者さんもいます。
新常態の働き方はどう変わるのでしょうか。
三菱総研によるとキーワードは、
1)集合型から分散へ
2)リアルからバーチャルへ
3)対人緊張から孤独化へ
それぞれのキーワードをもう少し掘り下げてみましょう。
1)人々が集団を避け、リモートワークが導入されると、働き方に新しいストレスが生じます。日本では欧米(50%)に比べ、リモートワーク率が低く(23%)、リモートワーカーと出社者の間に生じる心理的な障壁が問題になっています。パーソル総研(2020年6月20日)のアンケートでは、出社者の40%以上がリモートワーカーに対して不公平感や怠勤の疑念を持っているとのことです。
2)働き方がリアルからバーチャルになると、@仕事の評価、Aコミュニケーション、B仕事の割当方などに戸惑いを感じる場合が多くなっています。特にデジタルコミュニケーションは対面コミュニケーションと比べ、相手の視線や仕草などが認識されにくいので、仕事後の疲労感および消耗感が強いとの研究があります。
3)在宅勤務で対人接触が減ると人々の気持ちは内向きになります。コロナ鬱と呼ばれる気分の落ち込みが問題になっています。対策としては、友人や家族と密に連絡を取る、自然や動物に接する、有酸素運動を行う、などがあります。
内閣府(令和2年5/25から6/5まで 1万人へのインターネット調査)によりますと、調査期間中テレワークを行った割合は36.4%ですが、その内80%以上の人がテレワーク継続を希望しているとのことです。ただし、テレワークによって効率が上がったと回答した人は9.7%と限定的であり、日本の働き方はまだまだ発展途上と言えます。
新常態の働き方は、社内で新たなストレスが生まれやすい状態です。一方で時間節約や生産効率を高める可能性を有しています。皆で知恵を絞り、一つ一つの課題をクリアして、令和時代の新しい働き方を確立しましょう。
以上です。
今日は頭痛の話です。
頭痛のうち、外傷、血管障害、腫瘍、感染、薬剤(アルコール含む)、高血圧、風邪などの原因がないものを1次性頭痛と分類し、その中には片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛などがありますが、これらがオーバーラップする病態もあるため、確定診断は困難です。
梅雨や台風の時期になると「低気圧の前に頭痛がひどくなる」「頭痛の翌日は天気が悪くなるのがわかる」などと訴える人が多くなります。
頭痛の原因としては
心理的ストレス(79.7%)
女性のホルモン変化(57.3%)
空腹(57.3%)
天気(53.2%)
不眠(49.8%)
その他光、騒音、匂い、食事、飲酒などが引き金になります。
自律神経の興奮が興奮すると体内の血管が収縮する反面、脳血管が拡張することで、頭蓋内圧が高まり頭痛をきたします。また生理前の女性は体内の血液量が多くなるため(むくみやすい)、脳の圧力がさらに高くなります。
対処法としては、リラクゼーション(交感神経の働きを弱める)、利尿薬(五苓散やフロセミドでむくみを取る)、予防的な鎮痛剤の内服(生理前または低気圧前には頭痛が起こる前にイブなどを1日3回服用しておく)などがあります。
空腹と同じ原理ですが、脱水状態になっても自律神経の興奮でアドレナリンが分泌されるため、頭痛の原因となります。
今年は梅雨明けは8月に入ってからで、これからが夏本番になります。自律神経を緩める訓練をして、体調管理をしましょう。
以上です。
今年の冬は新型コロナとインフルエンザの両方を注意しなければなりません。特に前者は今のところ治療薬がありませんので、予防が大切になってきます。
結論を先に書きます。今年の冬に備えて予防接種をうちましょう。今回お伝えしたいことは3つです。
1)日本脳炎ワクチンの追加接種(19歳以上の方全員)8000円前後 1回
2)13価肺炎球菌ワクチン(年齢制限なし。基礎疾患のある方)10000円前後 1回
3)インフルエンザワクチン (10月から開始、6ヶ月〜12歳は2回、13歳上1回)4500円前後
3)の前に1)2)を受けておくことが望ましい。同時接種可能。私も先週うちましたw。
理由を述べます。
1)最近日本脳炎ワクチンが、新型コロナウイルス感染症に交差免疫を認める可能性が報告されています。日本脳炎の定期接種は、日本、中国、韓国、台湾、マレーシア、タイ、スリランカ、ベトナム、ネパールで行われています。そしてこれらの国では、新型コロナウイルス感染症の死亡率が低いのです。日本国内で唯一定期接種されていなかった北海道(平成28年4月より定期化)では、日本国内で最初に緊急事態宣言が出されたのは記憶に新しいと思います。
日本脳炎ワクチンは2-3歳で2回、4-5歳で1回、9歳で1回接種しますが、その後追加接種は任意となっています。ほとんどの方が最終接種から10年以上経過していると思いますので、ぜひ追加して効果増強(ブースト)を図ってください。
日本脳炎ウイルスは、新型コロナウイルス感染症と同じ一本鎖+(プラス)鎖RNAウイルスです。遺伝子の設計図が1本のRNAからできていて、細胞内に感染するとRNAが細胞内でタンパク質を作る非常に似通ったウイルスです。
日本脳炎ワクチンは不活化ワクチンといって、ウイル粒子をバラバラにして投与するので、副反応もほとんどありません。
2)肺炎球菌ワクチンは、風邪をこじらせた際の肺炎を防ぐワクチンです。風邪の原因はウイルスですが、症状が長引くと免疫力が低下するため、細菌感染を起こしやすくなります。肺炎球菌ワクチンには2種類あります(平成25年まで使用されていたプレベナー7(PCV7)を入れると3種類)。プレベナー13(肺炎球菌結合ワクチン:PCV13)とニューモバックス(肺炎球菌ポリサッカライドワクチン:PPSV23)です。
肺炎球菌は90以上の血清型があり、乳幼児の鼻腔常在菌で、免疫力が低下したときに中耳炎や髄膜炎の原因になります。ワクチンに示されている数字は含まれている血清型の種類です。日本では平成23年に4歳下の乳児幼児に対してPCV7の定期接種が始まり、平成25年には7価から13価へ変更されています。
一方ニューモバックスは多くの自治体で65歳以上から公費負担されている定期接種です。添付文書上は2歳以上から接種することができ、高齢者に限らず、喘息や糖尿病など基礎疾患を有する方は、任意で接種することが望ましいと言われています。一方、既にニューモバックスをすでに受けた方でも、1年以上あけてプレベナーを接種することが推奨されています(米国では先にプレベナーを接種し、1年後にニューモバックスを接種。日本ではどちらが先でもいいとされています)。
繰り返しになりますが、基礎疾患(喘息、高血圧、糖尿病)がある方は、65歳まで待たずに早めに受けた方が良いと思います。順番はまずプレベナー13、1年から4年後にニューモバッックスです。
3)インフルエンザワクチンは毎年2〜6月に決定され9月までに生産されます。A型は膜蛋白H16種類、N9種類で計144種類に分かれます。B型はビクトリア型、山形型の2種類です。毎年のワクチンはA型2種類、B型2種類が含まれた4価のワクチンです。今年の生産量は約3000万本(大人換算で6000万人分)と例年通りの量ですが、新型コロナの影響で希望者が殺到することが予想されます。
多少のお金がかかっても必要なワクチンは済ませておきましょう。そうしないとあとからお金と時間がとられます!
以上です。
日々の気温が20度を下回るようになり、すっかり秋めいてきました。今年も秋は短そうで、酷暑の夏から厳寒の冬へ向かおうとしています。
10月になりインフルエンザワクチン接種が始まりましたが、今年の冬は新型コロナウイルス感染症の影響で、単なる風邪では済まされない悩ましい時期に突入します。新型コロナウイルス治療薬アビガンは今月中にも認可されそうですが、ワクチンの認可は年内には難しそうです。
そこで今回のテーマは自然免疫(innate immunity)です。自然免疫とは我々が生まれながら備え持っている、外敵(細菌、ウイルス、寄生虫など)に対する非特異的な身体防御システムです。それに対して、特異的な防御システムを獲得免疫(acquired immunity)といい、これは麻疹(はしか)や水痘(水ぼうそう)など特定なウイルスや菌に対する「抗体」を指します。
また、インフルエンザウイルスやコロナウイルスは一本鎖RNAウイルスに分類されますが、非常に変異を起こしやすいので、獲得免疫(抗体)が産生されにくいと言われています。抗体を作っても相手のタンパク質がコロコロ変わって対応できないからです。そのような場合は自然免疫の段階で、つまり粘膜でマクロファージ、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞などが活躍して殺菌します。
今年の冬はインフルエンザやコロナから体を守るため、自然免疫を大いに強化する必要があります。どうすればいいのでしょうか。一般的には食事、睡眠、飲酒・喫煙を控える、適度な運動などが推奨されます。
私は医師になって32年間、日曜以外診療を休んだことはありませんが、年に1〜2回は風邪をひきます。それは決まって深酒をした翌日か寝不足が続いた時です。酔っ払って口を開けて寝ていると、喉の粘膜がカラカラに乾燥して、局所の免疫力が極端に低下します。
一方で、寝不足になると脳からコルチゾールというストレスホルモンが放出されて、白血球の働きが抑えられてしまうのです。ちなみに白血球が働きすぎても、関節リウマチや喘息、花粉症のように体に余計な炎症を起こすので困ります。このような時は、逆にコルチゾールのようなステロイドホルモンで白血球の働きを抑える治療が行われます。
今回は自然免疫を高めるため、ストレスホルモンであるコルチゾール(cortisol)を減らしましょうという話です。
コルチゾールは血管を収縮させ血の巡りが悪くなり、白血球の働きを抑えるため色々な病気にかかりやすくなってしまうのです。体内のコルチゾールを下げるには、
1)適度な睡眠・運動をこころがける。
2)野菜・キノコ類を多めにとる。
3)イライラしない、心にゆとりを持つ。感謝の気持ちを持つ。
4)リラクゼーション(ヨガ・瞑想)を行う。
5)楽しいことをする。笑う。
6)友達、家族との付き合いを大切にする。
7)植物や動物の世話をする。
8)自らの力不足を勉強して補う。悪い習慣(2度寝、長時間のPCゲーム)を正す。
9)信心する(神社やお寺、お墓やお仏壇にお参りをする)。
10)深酒しない(自戒)。飲酒を控える。
などの方法があります。1)から7)まではよく言われる事ですが、8)や9)はやってみるとストレス解消になりそうですね。
自然免疫を鍛えて今年の冬を元気に乗り越えましょう。
以上です。
下記サイトを参考に改変しました。
https://www.healthline.com/nutrition/ways-to-lower-cortisol#TOC_TITLE_HDR_2
コロナ禍の生活で人々のストレスが高まっていると言われています。経済の停滞、雇用率の低下、人々が集う楽しみがことごとく禁止されており、ストレス発散ができなくなっています。
街中でもマスクの付け方を巡ってのイザコザやSNS上での誹謗中傷などが毎日のようにニュースになっています。実際の診療においても、リモートワークの些細な言葉の行き違いで会社に行けなくなるケースを経験します。
今回は、イライラした気持ちをリセットするアンガーマネジメントや日頃のストレスを軽減するストレスコーピングをご紹介します。
1.Anger management
ふつふつと湧いてきた怒りを鎮める方法として、
1)話す前に考える、深呼吸する
2)しばらく黙り、考えをまとめてから話し始める
3)体を動かす
4)短時間でも休憩をとる
5)ストレスフルな話題の中に一理はないか考える
6)ストレスの原因を作った相手を恨まない。許す気持ちを持つ
7)ユーモアある表現を心がける
8)怒りが込み上げてきた時に肩から腕の力を完全に抜く
上記のことは、あまり怒りが激しくなってしまうとできなくなりますので、日頃からストレスを溜めないことが大切になります。
2.Stress coping
よく「私はストレスなどありません」という方がいますが、ストレスがどのような形で現れるか理解することが重要です。
ストレスは次の5つの形に現れることを理解します。
1)気分の落ち込み(不安、緊張、焦燥)
2)身体の反応(血圧上昇、頭痛、腹痛、腰痛)
3)不健康な習慣(飲酒量、喫煙数の増加、過食)
4)仕事効率の低下(着手できない、段取りできない、ケアレスミス)
5)人間関係がうまく行っていない
特に女性では頭痛、過食が、男性では腹痛、飲酒、喫煙量の増加がストレスの現れであることが多いです。4)5)は性別問わずよく見られます。
日頃のストレスを溜めないようにするには、体の力を抜いて、良いイメージを浮かべ、ゆっくり息を吐いてリラックスします。
また、やるべきことをリストアップし時間を決めて計画的に行動する、食べすぎ飲みすぎを改める、悩んでいることを信頼できる人(医師でもよい)に相談する、などが有用です。
私は診察中、座禅の呼吸を実践しています。背筋を伸ばし、肩の力を抜いて、鼻からからゆっくり息を吐くようにします。息を吐くときにお腹を凹ますようにします。すると、体中の血液がお腹の部分に集まって、頭に血が上らなくなります。
心身の疲れが溜まりにくくなりますのでみなさんもぜひお試しください。
Anger management: 10 tips to tame your temper(Mayoclinic)
Stress Management and Emotional Health(Cleveland Clinic)
以上です。
前回「褒めよう。私たちを。」で我々の感染対策がいかに効果を発揮しているか、いくつかのデータを示しました。しかし、著しい寒波とPCR検査の拡大とともに感染者(大半は無症状)が増え、昨日には1都3県で2回目の緊急事態宣言が発出されました。
残念です。もっと褒めてくれてもいいのに。
そんな中で今回のテーマは「うつ病を予防する生活習慣」です。
うつ病は「やる気がしない」「億劫だ」「気分が落ち込む」という状態が続く病気です。どこまでが病気なのかという議論はありますが、今回は省きます。
うつ病は大きく2つに分類されます。一つは「内因性うつ」、もう一つは「反応性うつ」です。簡単に説明すると、前者は特に環境の変化がないのに上記の症状が続いている状態です。後者は環境の変化をきっかけにして上記の症状が続いくものを指します。前者は几帳面で真面目な人がなりやすく、後者は認知行動特性(考え方や生活習慣)が関係していると言われています(最近はこの他に「未熟型うつ」という、依存、回避を特徴とするものも注目されています。これは薬で悪化します)。
前者は抗うつ薬が効きやすいですが、後者は薬が効きにくく、認知行動療法(考え方や生活習慣を改める)が有効です。実際は内因性と反応性の両方を併せ持っていることが多く、治療は最低限の薬物療法と認知行動療法を組み合わせて行われます。
成人病を予防するために食事・運動療法が有効であるのと同様、うつ病を予防するためには、考え方や行動に気をつけることが大切です。
認知(考え方)のコツとしては、心のストライクゾーを広くすること。「こうしなければいけない」「これではダメ」と考えるのではなく「これでいいのだ」「まっいっか」と考えるようにしましょう。
行動習慣で大切なことは、疲れたら体を動かしてから休むということです。ただ休んでしまうと血の巡りが悪くなり、体内に疲労物質(乳酸)が溜まりやすくなります。軽くストレッチしてから休みましょう。また、やる気がしない時も体を動かすことで、脳からやる気のホルモン(アドレナリン、ドーパミンなど)が放出されます。
特に、朝目覚めてから布団を出るまでの行動が重要です。もう少しと思って二度寝するよりも、布団を蹴飛ばして体を動かすと脳がスッキリします。私は朝目覚めたら部屋を明るくして、布団の中で腹筋100回、背筋(水泳のバタ足)100回を習慣にしています。
1日のスタートが良ければ、その日の気分も違ってきます。
皆様もぜひ試してみてください。
参考文献:
未熟型うつ病と双極スペクトラム 阿部隆明著
疲れたら動け 小林弘幸著
以上です。
いよいよワクチン接種も佳境に入り、今月末にはオリパラが開催されます。各国から選手団が入国し、その笑顔を見るとコロナ禍の暗い気持ちが少しは晴れるような気がします。大リーグの大谷選手も大活躍していて、私達の気持ちを元気づけてくれています。
一方でコロナ禍によってうつ病やうつ状態の人の割合が増加していることが報告されています。経済協力開発機構(OECD)による日本のうつ状態の人の割合は、2013年調査で7.9%が2020年には17.2%と倍増しています。
昨年出版された「スマホ脳(アンデシュ・ハンセン スェーデンの精神科医)」によると、人間のメンタルヘルスを良好に保つ上で、「睡眠」「運動」「人とのつながり」が重要であると述べています。
コロナの影響で人との関係が希薄になっていますが、気分がすぐれない時は信頼している人に電話してみるのもお勧めです。今日のテーマは「聞く(hear)」と「聴く(listen)」です。
『類語国語辞典』(角川書店)によると「聞く」は、音や声を耳に感じ認める意、「 聴く」は、聞こえるものの内容を理解しようと思って進んできく意である、と記されています。困っている人や悩んでいる人が相談に来たときに、あなたはその人の話を「聴く」ことができるでしょうか。ただ「聞く」だけになってないでしょうか。
人の相談を受けた時に「それはこうしたら良い」「私の時はこうだった」「それは当然だ」などと相手の話を遮ってしまうと、相談者は「この人に話しても無駄だな」と感じて話を引っ込めてしまします。
「聴く」ためには、話の内容をストーリーとして理解することが大切です。なぜそうしたのか、その時どう思ったか、他の方法はなかったか、などといろいろ質問して、相談者の言いたいことを次々と引き出します。話の内容を否定せず、こちらの意見を押し付けず、うなずくようにしてストーリーをまとめ上げていくのです。
よく話を聴いた後に、「それは大変だったね」「困ったね」と共感し「個人的異見だけど」「こう考えてみたらどうだろう」などと自分の意見を伝えることも有効です。多くの悩みは人に話すことで問題点を再構成できるので、自然に解決策が浮かんできたり、気持ちが前向きになったりします。
私も日頃の診察で、上記のことを心がけています。患者さんから「これは別件なんですけど」とか「もう一つ伺ってもいいですか」などと言われた時は、至福の喜び(大げさか)を感じます。医師は、患者さんからの情報が多ければ多いほど正確な診断ができますので。「別件」の質問が重要な意味を持つことは、よくあります。
最後になりますが、人が相談したくなるような雰囲気(表情、優しい視線、穏やかな声、ゆったりとした動き)が普段から醸し出されていることがとても大切です。日々の忙しい業務の中、そのような雰囲気を保つことは難しいと思いますが、ぜひ心がけてみましょう。
以上です。
連日金メダルに湧く報道と新型コロナ感染者の増加を警告する報道が交錯するという、お祭りと葬式に同時に参加しているような複雑な心境の毎日です。都内の新型コロナPCR陽性者は4000人を超え、私達の周囲にもPCR陽性の人がちらほら現れるようになりました。
7月30日の菅首相会見によれば、「高齢者の76%が2回接種を終えている。今後は若年者への接種加速化が急務」とのことです。高齢者より若年者の感染例が目立つようになってきました。
果たしてワクチンの効果が出ているから、65歳以上の感染者が少なくなっているのでしょうか。ウイルス変異によって高齢者にかかりやすかった新型コロナが、若年者にかかりやすくなっていると考えるのが自然ではないでしょうか。つまり、新型コロナから旧型コロナ(普通の風邪)に移行しているのです。
これまでは、身近で新型コロナにかかる人はいませんでしたが、これからは職場内でも夏風邪様の症状をきたし、新型コロナと診断される方が出てくると思います。本来コロナウイルスは冬の風邪の起因ウイルスですが、夏には高温多湿を好むウイルスが風邪を流行らせます。
今回皆さんにお伝えしたいことは、夏風邪を防ぐ方法です。夏風邪はエンテロウイルス(腸)、アデノウイルス(喉)によって発症し、胃腸炎や咽頭炎の症状が中心となります。その他、ヘルペスウイルス(帯状疱疹)、コクサッキーウイルス(手足口病)も流行します。
夏風邪をきたす環境要因である1)熱疲労による免疫力低下、2)クーラーによる冷えと乾燥、に焦点を当てその対策をまとめました。
1)夏は日の出が5時前(今日の日の出は4時54分)で、早朝に目が覚めることが多く、睡眠時間が短くなるので、早寝早起きが基本です。外が暑く、家に閉じこもりがちになリますので、室内でストレッチなどをして血の巡りをよくすることが大切です。
2)クーラーをつけて寝ることが多く、寝冷えや粘膜の乾燥の原因となります。クーラーの設定温度を高めにするか、ドライモードにするといいでしょう。また、腹巻きをしたり長袖の寝巻きを着て体の冷えを防ぎます。Tシャツ短パンはお勧めしません。
疲れを取るための睡眠が、風邪のきっかけになることに注意が必要です。
万が一、この時期に微熱や喉の痛みなど風邪症状が出たら、無理をしないで仕事を休みましょう。喉の風邪には暖かい水分を取り、ぺラック(トラネキサム酸)や葛根湯を飲んでよく寝ること。お腹の症状には葛根湯の代わりに柴苓湯です。熱があればロキソニン、イブ、タイレノールやノーシンホワイトを飲んでもいいです。いずれも薬局に売っていますので、常備しておきましょう。
新型コロナが変異を繰り返して、一般の風邪症状に近づいています。昨日菅総理の会見で、自宅療養者を診療所の医師が往診するよう要請があり、そろそろ指定感染症から外れることが予想されます。少しぐらいの熱で、すぐにPCR検査を行う意義も少なくなっています。風邪かなと思ったら会社を休み、2-3日は上記の方法で様子をみてください。
以上です。
健康一口メモ 20210903
朝夕涼しい風が吹き、秋の気配が感じられるようになってきました。
新型コロナはデルタ株による第5波が猛威を振るい、ワイドショーでは自宅療養者の症状が急に悪化しても、入院できないという差し迫った映像を流しています。中には乳児が新型コロナに感染し、人工呼吸を受けているシーンも放映されています。
そろそろ皆さんの周りにも、新型コロナに感染した人が散見されるのではないでしょうか。明日は我が身かもしれません。或いは家族がかかるかもしれません。
今日のテーマは「新型コロナにかかったらどうする?どうなる?」です。
もし家族が感染したら、自身は濃厚接触者です。家族が治癒(発症後10日間)してから、更に14日間の経過観察が必要です。家族が治るまで10日間、それから更に14日間、計24日の自宅待機が保健所から指示されるそうです。これは今でも厚労省のサイト*1に示されていますが、その根拠は昨年2月の日本環境感染学会の提言*2です。
しかし、これではエッセンシャルワーカーの仕事が成り立ちませんので、今年の8月になって「医療従事者に限っては濃厚接触者でもすぐに勤務できる」という文書が厚労省から示されました。
濃厚接触者の定義は、@患者と同居、車内や飛行機で長時間接触、Aマスクなしで患者と15分以上1?2mで接触があった場合、などですが、保健所が総合的に判断して決定します*3。
もし職場で新型コロナ感染者が出たらどうなるでしょう。最近はリモートワーク中心になっていますので、そのような場合は問題ないと思います。もしオフィス出勤者が発症するとどうでしょうか。1年ぐらい前は、当ビルのオフィスでも感染者が出て、保健所の指示で濃厚接触者のPCR検査が行われました。
最近では、「初動対応における接触者」への検査*4が重要視されています。すなわち社内で感染者が発生した時、保健所の指示を待たずに、患者との接触が考えられる者に、抗原検査やPCR検査を積極的に行うことが求められています。
もし自分自身がコロナにかかったらどうなるのでしょう。病院でコロナと診断されると24?48時間以内に居住地の保健所から電話連絡があります。感染経路などについての質問の後、健康観察が行われ、軽症(酸素飽和度96%以上または基礎疾患のない人)であれば、宿泊療養を勧められます。ホテル宿泊を希望しない人は自宅療養になります。中等症(酸素飽和度95%以下で基礎疾患のある人)は、入院の指示があります。
現在、都内のコロナ病床6000床のうち4200床が入院中で、入院基準が厳しくなっています。軽症者は原則ホテルでの健康観察を勧められますが、9月1日時点でのホテル療養者は2180人(3370受入可能)、自宅療養は約20000人で、ほどんどの人が自宅療養を希望しています。入院調整中は6800人です*5。狭い部屋に閉じ込められて、好きなものを食べられない環境は、適切な療養環境とはいえませんから当然の結果だと思います。
自宅療養中は毎日一度保健所から健康観察の電話が入ります。パルスオキシメーターの貸与と1週間分の食料(カップ麺、レトルト食品)が届きます(発症から4?5日かかる)。一人暮らしの人は、デリバリーで食料を買うか、近所で必要最低限の買い物をします。発症後10日かつ解熱後72時間経過した時点で治癒と判断され、療養は終了です。
新型コロナ感染症の特徴として、息苦しさを感じる脳の部分が麻痺していることがあり、急激な呼吸不全をきたしても患者本人が気づかないことがあります。8月13日になって厚労省は医療機関に対して、「PCR検査を行った医療機関が積極的に健康観察を行うようこと」という通達を出しました。
新型コロナウイルスの病期は以下のとおりです。
@ウイルス感染期→症状は熱、頭痛、咽頭痛、咳などで1週間前後で改善。8?9割の人はここで治ります。治療は解熱剤、漢方薬(麻黄湯、葛根湯)、ハイリスク患者には抗ウイルス薬(レムデシビル、抗体カクテル)を点滴します(総合病院の外来に限る)。
A免疫介在性炎症期→発症7?10日後より呼吸困難が急速に進行し、入院が必要です。治療は酸素療法に加えて、ステロイド、抗炎症薬(バリシチニブ)の点滴を行います。
B後遺症期→慢性的な倦怠感、疼痛、嗅覚・味覚異常が数ヶ月以上続くことがあります。治療は確立したものはありませんが、漢方薬(補中益気湯、八味丸など)、抗うつ薬などが使用されます。
ここからは私見です。
政府や分科会は、今だにPCR検査や抗原検査を積極的に行うようにと発信しています。しかし、新型コロナもここまで流行してくると全数把握の意味は薄れていると思います。インフルエンザと異なり診断がついても治療薬はなく、特に11歳以下の小児・乳幼児はワクチンすら打てないので、完全な制圧を目指すことに無理があります。
若くて元気な人が発熱や濃厚接触したときに、すぐにPCR検査を受ける必要はないと思います。診断がついても治療法はありませんし、若者はすぐに治ります。保健所業務も手一杯です。濃厚接触者であってもPCRは行わず、感染対策をしっかりして行動を最小限にすればいいのではないでしょうか。もちろん基礎疾患のある人や高齢者はこの限りではありません。
今度はμ株なんぞが話題になっていますが、そろそろ個々人が冷静な行動をとる時期だと思います。 以上です。
*1 厚生労働省サイト *2 令和2年2月28日 日本環境感染学会提言 *3 令和3年8月17日 東京都福祉保健局感染症対策部長 *4 令和3年6月 25 日 厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部 *5 新型コロナウイルス感染症の療養者の状況(厚労省サイト)
10月1日から緊急事態宣言が解除され、新型コロナの第5波も収まりつつあります。通勤電車の混み具合が増してきたように感じます。座って寝ている人もいますが、起きている人はほとんど本を読んだりスマホを見ています。
今日のテーマは、ぼんやり(unfocus)の勧めです。
2001年に米国の権威ある医学誌に、Default Brain Network(既定の脳内ネットワーク:DBN)という概念*が発表されました。DBNは、車のエンジンで言えばアイドリングのような状態で、アクセルを踏んでいない時でも(集中していない時でも)静かに働いている、潜在的な脳の機能と言えます。車はずっとアクセルを踏み続けていると、エンジンが熱くなりすぎて、ピストンとシリンダーが溶けて動かなくなる「焼け付き(オーバーヒート)」を起こしてしまいます。
つまり、過度に集中しすぎると脳がオーバーヒートを起こし、高次脳機能が一時的に低下してしまうのです。高次脳機能とは、注意、記憶、学習、計画遂行(てきぱきと仕事をこなすこと)、感情などを指します。低次脳機能という用語はありませんが、視覚野、聴覚野、運動野、知覚野という脳の基本的領域が複雑に連絡(連合野)し合い、高次脳機能を形成しています**。
一方でDBNは、脳内に保存されている情報をスキャンする状態であるため、思わぬアイデアが閃いたり、環境変化に対応しやすくなる、考えが柔軟になることがわかっています。集中が長時間にわたると、DBNが働かず、他人との柔軟な交流が図れなくなります。集中しない時間(ぼんやり時間)が大切なのです。ぼんやりすることで心が柔軟(psychological flexibility)になり、いわば精神的なストレッチと言ってもいいでしょう。
DBNは、次のような時に活性化すると言われています。公園をぶらぶら歩く、芝生に寝っ転がって空を眺める、編み物、ガーデニングにいそしむ、自分の過去の思い出に浸ったり、将来の夢や恋人を想ったりする時などです。過去のあらゆる情報が統合されて、思考の幅が広がります。同時に他人の気持ちを汲み取りやすくなり、組織をまとめるにも役立ちます。
実際にアスリートはパフォーマンスを発揮するために、視線をunfocusすることが有用と言われています***。一点に集中するような視線は、首の筋肉を硬直させ、体の動くを妨げます。武道の教えでも、構えるときは相手を含めて周囲の風景全体を捉えるようにと習います。相手を睨みつけるような視線は、反射神経を鈍らせるからです。
長時間PCのモニターに集中している毎日ですが、たまにはぼんやり時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。
と言いつつ、満員電車の中でこの原稿を書いていますw。
* A default mode of brain function. Proc Natl Acad Sci U S A. 2001 https://doi.org/10.1073/pnas.98.2.676
** 高次脳機能 平成帝京大学 臨床心理学研究科 中島恵子 https://www.normanet.ne.jp/~RPA/index2_1.html
*** 理学療法士 中野崇氏 https://jarta.jp/about/trainingtheory/#c
今回は1年8ヶ月の新型コロナ感染症についての知見をまとめてみたいと思います。
新型コロナワクチンは武漢株以外には効果が低下する
日本同様70%以上の国民が接種済みのイギリス、イスラエル、シンガポールでも2021年10月より感染者が増加しています。武漢株に対して95%以上の効果を持つワクチンですが、RNAウイルスである新型コロナウイルスは自己修復能が乏しいため、2週間に1度の割合でSタンパク(ウイルス表面にあるタンパク質)の変異が起こっており、Sタンパクのみを標的としたワクチンの効果はどんどん低下します。
半端ない新型コロナワクチンの副反応
新型コロナワクチン(ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ)のいずれのワクチンも、2人に1人以上の割合で高熱や倦怠感をきたし、接種翌日は休養が必要です。ファイザー発表の接種後の発熱は6人に1人でしたが、日本人に於いては副反応の頻度が高く、中には40度近い熱が数日続く人もいました。こんなに副反応の強いワクチンは類を見ません。来年秋に上梓予定の、不活化ワクチン(KMバイオ)が待ち遠しいです。
新型コロナワクチンは日本人には不要
アメリカ、イスラエルではワクチン接種後の罹患率(新型コロナに罹る人)は、接種前の10分の1に減少しました。それでもワクチン接種前の日本人の3倍かかりやすい状態です。世界の状況を見ると、アジア人では感染率も死亡率も低くなっています。上記のような副反応を考慮すると、50代以下の健康な人は、ワクチンを受けない方がいいと思います。すでに日本国民の70%以上が接種していますが。。。米国では5歳から11歳へのワクチン接種が始まっていますが、来年秋まで待ちましょう。
ワクチンによって軽症化しているのではなく、単にウイルス変異によって軽症化している
ワクチンが導入される以前の第1波、第2波は世界中でほぼ同時に始まり自然消滅しています。ジョンズホプキンス大学サイトで、世界の感染者数と死亡者数のグラフを眺めていると、ワクチン導入以前であっても、時間経過とともに死亡率が低下していることがわかります。
ウイルス流行と消退は自然現象
「第5波が消失したのはワクチン接種の影響」と述べる専門家が多いですが、コロナウイルスのような不安定(RNA一本鎖)なウイルスは、流行しすぎるとホスト(ヒト)の免疫が高まるため、それから逃れようとして(免疫逃避)変異傾向が強まり、複製ミスが起こり、自滅すると考えられています。コロナの流行は、イギリスのようにいきなりロックダウン解除するようなことがなければ、正規分布の形で推移します。
インフルエンザワクチンの有効性は新型コロナワクチンのそれを上回る
罹患率が5人に1人のインフルエンザと100人に1人の新型コロナ。ワクチンの効果efficacy (相対危険度低下)は、インフルエンザで70%、新型コロナで95%です。有効性effectiveness (絶対危険度低下)は、インフルエンザは1.6%(60人に1人の予防に寄与する NNV=60)、新型コロナは0.7%(130人に1人の予防に寄与するNNV=130)。実社会では、効果の低いインフルエンザの方が、効果の高い新型コロナワクチンより、有効性が高いのです。また、インフルエンザワクチンが、新型コロナ感染の予防効果があるとの報告も出ています。インフルエンザワクチンは、副反応もほとんどないのでぜひ接種しましょう。
第6波は必ず来る?
ウイルス感染(コロナ以外も含め)は台風と同じ自然現象なので、必ず定期的に流行します。ロックダウンしてもワクチンを打っても必ず流行は抑えられません。動物が媒介しますので。PCRや抗原検査を頻回に行っても無意味です。コロナであれば変異を重ねてさらに重症化しにくくなると思われます。もし今年インフルエンザが流行れば、ここ2年間インフルエンザの患者はほぼゼロでしたので、人々の免疫も低下していることもあって、爆発的に増えるでしょう。インフルエンザは子供に罹患しやすく、肺炎や脳症に至ることもあるので注意が必要です。
今年の冬への備え
1)インフルエンザワクチンを打ちましょう。
2)高血圧、糖尿病、肥満、喘息がある人は、年齢に関わらず肺炎球菌ワクチン(プレベナー、2ヶ月後にニューモバックス)を打ちましょう。
3)体調管理と他人へ感染させないような生活を心がけましょう。
私も健康な50代(58歳、孫1人)のため新型コロナワクチンは打っていません。インフルエンザ、肺炎球菌2種、日本脳炎を打ちました。お酒(燗酒)を毎日2合飲んでいます。健康診断で指摘事項はありません。自己管理はストレッチを毎日、筋トレは1日おきにやっています。毎朝犬(柴犬、ハチ)の散歩をしています。新型コロナの患者さんも数十人ですが診察することができました。
皆さんも必要なワクチンを接種し、自己管理を怠らず、今年の冬を無事に乗り越えましょう。来年初めには新型コロナも指定感染症から外れ、インフルエンザ同様の扱いになるものと思われます。そうすればまた、大勢でワイワイやることができるようになるでしょう。
以上です。
Coronavirus COVID-19 Global Cases (Johns Hopkins University)
Effectiveness of Covid-19 Vaccines against the B.1.617.2 (Delta) Variant
N Engl J Med. 2021 Aug 12;385(7):585-594.
H.H., Boucau J., Bowman K., et al. Persistence and Evolution of SARS-CoV-2 in an
immunocompromised host. N. Engl. J. Med. 2020;383:2291?2293.
Transmission, infectivity, and neutralization of a spike L452R SARS-CoV-2 variant. Deng X, et al.
Cell. 2021 Jun 24;184(13):3426-3437.e8.
空気が乾燥して寒くなってきました。マスクをつける習慣がついて、気道の乾燥は緩和されているかもしれません。この時期になるとコンコンと咳き込む人が多くなってきます。定義上、3週間以上続く咳を遷延性咳嗽(がいそう=咳の医学用語)といい、レントゲン検査や血液検査の適応となります。
一般に、咳を訴えて病院に行くと、咳き止めが処方され、1週間続くと抗菌薬が追加されます。それでも治らないとレントゲンや血液検査が行われて、肺炎でないことが確認されます。それらの検査で異常がない場合は咳喘息と診断されます。
咳喘息という病名を聞いた事がありますか?喘息の軽いバージョンのことです。喘息では気管支の炎症により、気道(空気の通り道)が狭くなり、呼吸をする時にピューピュー音がします。喘息の人は横になると重力の関係で、気道の腫れが強くなり余計に苦しくなるので、机に伏せる様にして休まなければなりません。
私が研修医だった30年前頃は、夜になると多くの喘息患者さんが発作を起こして、救急外来を受診する人が多く、入院になる人も少なくありませんでした。1978年にステロイドの吸入が国内で発売されましたが、その使用は重症患者のみに限定されていました。2009年の喘息治療ガイドライン(JGL2009)で初めて、ステロイド吸入が軽症喘息の第一選択薬に推奨される様になったのです。それ以降、喘息発作で病院を受診する人は激減しました。
ステロイドという薬は、副作用が強いイメージがあるせいか「ステロイドはちょっと抵抗があるので、咳止めをください」という方もたまにいらっしゃいます。全ての咳止めは麻酔作用がありますので、眠くなったり物の見え方がおかしくなったりするなどの副作用があります。咳止めは、気管支の炎症によって起こりやすくなった咳反射を、脳を抑制することで抑える非根本的な治療です。ですから「1ヶ月以上咳止めを飲み続けているけど咳が止まりません」という方はたまにいらっしゃいます。
一方吸入ステロイドも副作用があります。薬を吸い込んだ後、うがいをしないと口内炎ができたり、カンジダというカビが喉に生える場合があります。これらの副作用は、吸入をやめなくても、薬ですぐに治りますので心配ありません。吸入直後にうがいをすることで防げます。吸入薬の中にステロイドに気管支拡張薬(βブロッカー)が追加されている合剤があり、気管支拡張薬は動悸や手の震えの副作用があります。咳喘息であればステロイド単剤で十分です(おすすめはアズマネックス)。
風邪を引くと咳が残るという人は、咳喘息の症状が疑われます。ぜひ呼吸器専門の病院で相談してみてください。特に花粉症が強い方、蕁麻疹がある方、小児喘息の既往がある方は要注意です。
以上です。
明けましておめでとうございます。宴会もやっていいのか悪いのか、もやもやした年末でした。大晦日のテレビでは、代々木公園での年越し参拝が超満員の様子が映し出され、今年一年の熱気が伝わってきます。お祈りの定番は、健康、家内安全、合格祈願などでしょうか。
今回のテーマは、健康診断(法定健診)後の面談についてです。
昨年、皆さんの健康診断結果を見直しました。対象は、産業医を担当している3社の計456人です。産業医として健康診断後に面談していただく方の基準は「要治療」の中で急を要する方や「要経過観察」で30代以下の方を考えています。
男性のワースト5は「肝酵素上昇」「高脂質異常」「肥満」「高血圧」「高尿酸血症」で、女性では「脂質異常」「肝酵素上昇」「貧血」「高血圧」「肥満」でした。異常の程度によって「要経過観察」または「要治療」と判定されます。「要治療」はもちろん医療機関を受診する必要がありますが「要経過観察」では受診されない方が多いと思います。
「要経過観察」の人こそ、医療機関を受診していただくようお勧めします。そして、血液検査で異常値を認めたときは、必ず2?3ヶ月後に再検査をするようにしてください。中には「一度受診して薬を出されたら、一生のまなければならない」とか「家で血圧を測るといつも正常だから大丈夫」などと、現実から目を背けて放っておく人がいます。そのような方は、毎年しつこく面談させていただきますw。
内科の診療は、薬を出すことだけではありません。最も大切なことは「健康への意識を高めること」です。「運動」「食事」「嗜好」を改善することが、服薬以上に重要です。我々臨床医は薬を処方するだけでなく、患者さんの生活習慣に焦点を当て、自己管理を促すことを心がけています。基本は、@毎日体重を測る、Aカロリー控えめ、B飲酒、喫煙を控える、C股関節、肩関節ストレッチ、D息の上がる短時間の運動、です。
このような話をすると「忙しくて時間がなくて」「ストレスで食べてしまうんです」などとおっしゃる方もいらっしゃいます。確かにご自分の意思だけで食事・運動療法を継続することは、難しいものがあります。最近ではジムもトレーナーの指導を受けて行う、パーソナルトレーニングが人気です。月に数万円かかる場合が多いですが、トレーナーがいるといないとではやる気も変わってくると思います。
病院の診察代は初診料2,830円の3割(849円)です。気になる症状をインターネットでいろいろ調べる方がいますが、素人が調べると頓珍漢な情報ばかり拾ってきてしまいます。私も患者さんの症状についてインターネット検索をしますが、英文で調べるので情報量が多く、信頼できる順番に表示されます。皮膚所見を写真で撮影して、画像検索することもできます。いずれにせよ、得られた情報を吟味するための知識と経験が必要です。ぜひ、お気軽に病院を受診してください。
生活習慣を是正したにもかかわらず、半年かかっても検査値が正常範囲に戻らないときは、少量の薬を早めに始めた方がいいと思います。早めに服用することで、数値を正常範囲に戻すと、体内のシステムがうまく回り始め、体の疲れが溜まりにくくなります。生活習慣の改善によって薬物を中止できることもあります。
一方で、会社の健康診断(法定健診)を軽視しているわけではないと思いますが「自分は人間ドックを受けているからそちらの結果を見てからにする」とお考えの方もいらっしゃると思いますが、人間ドックは医療というよりはビジネスなので「過剰診断」「過剰治療」について留意する必要があります。人間ドックについては「健康一口メモその14(https://www.sannoclinic.jp/kenko.html#14)で解説していますので、ご参考ください。
最後に繰り返しますが、健康診断で「要治療」の人はもちろん「要経過観察」の人もぜひ医療機関を受診してみてください。
個別のご相談がある方は、人事部担当者に産業医面談希望とお伝えください。人事部を通さず、直接産業医宛にメールしていただいても構いません。個人情報は守秘し、事業者への報告が必要な時は、内容を加工して行います。
本年も健やかな1年を迎えられますよう、自己管理をよろしくお願いいたします。
オミクロン株が蔓延して、そろそろ皆さんの周辺でもかかる人が出てきていると思います。オミクロンはデルタ株までの新型ウルスとは異なり、上気道症状が中心で重症化しないと言われています。ところが、新型コロナ感染症は、初期の悪寒、発熱、咽頭痛などの症状以外に、長期的に悩まされる症状があり注意が必要です。
国立感染症研究所は@急性期症状、A急性期から遷延する症状、B回復後に出現する遅発症状、に分類しました。Aは主に倦怠感、味覚・嗅覚障害、咳、呼吸困難などです。Bはウイルス感染後疲労症候群とも呼ばれ、脱毛、集中力、記銘力低下、うつなどの症状です。脳に霧がかかったようになって、思考力や認知機能が低下するブレインフォグ(脳の霧)、頭痛、しびれなどの神経症状続きます(日本醫亊新報 No.5096 p6-7)。
海外でも米国疾患管理予防センター(CDC)英国国立医療技術評価機構(NICE)のガイドラインでは、COVID-19罹患後4週間以上続く症状をロングコビットと定義しています。
これは新型コロナウイルスに限った症状ではなく、インフルエンザ、コクサッキー(手足口病) 、パルボ(リンゴ病)、デング熱、伝染性単核球症などあらゆるウイルス感染症後にみられます。
前置きが長くなりましたが、今回のテーマはウイルス感染後症候群(post-viral syndrome)
です。
1990年代に提唱された慢性疲労症候群という概念をご存知の方もあると思います。ウイルス感染後に意欲低下や全身倦怠感が続き、元気だった人が仕事もできずに寝たきりに近い状態になってしまいます。その原因がメンタルかフィジカルかが論争になったことがあります。最近では慢性的な免疫賦活状態(体の中で炎症がくすぶっている)ということがわかっています。
これと同様に新型コロナ感染症後に体内で炎症が続いた場合は、それに対応する治療が必要になりますので注意が必要です。頻度が高いものとして、
1) 二次感染としての化膿性咽頭炎、副鼻腔炎、肺炎、腸炎→抗菌薬による治療
2)長引く咳(無菌性の気管支炎)→ステロイドの吸入
3)意欲低下、思考力低下、易疲労感→食事療法、運動療法、芸術療法
これらの症状の原因は体内で炎症が遷延化していることにので、疲れが溜まり自律神経のバランスが低下している場合に起こります。巷では新型コロナ後遺症外来が予約で一杯のようですが、症状に対する不安感が治りを悪くしている原因の一つだと考えられています。一番の治療は、自然に触れて、よく休む、よく笑うことでしょうか。
さて、もし皆さんが熱が出て近所の医療機関を受診しようにも「検査キットがない」「予約が一杯で受けられない」と言われた場合は、ご遠慮なくクリニックまでご連絡ください。テレワークならぬテレメディシンのシステムを用意しておりますのでぜひご利用ください。
https://www.sannoclinic.jp/online.htm
報道によれば英国も米国もオミクロンは減少に転じています。日本でも後1ヶ月もすれば収束するでしょうから、今年のお花見は思いっきり盛り上がれるといいですね。
以上です。
今週から急に暖かくなっています。今年の2月の気温は、平年と比べて1.2度低かったそうですので、喜びはひとしおです。反対に気になるのが花粉症です。
2022年の花粉飛散量は例年の1.2倍でやや多いようですが、皆さんマスクをきちんとつけているので、喉と鼻の症状は少なく、目の症状を強く感じるようです。
今回のテーマは、花粉症の点眼薬の使い方です。
市販の点眼薬を見てみると、アレルカット(第一三共 738円)、アルガード(ロート 1436円)、アルピタット(武田 938円)となっています。これらの点眼薬の主成分は、クロモグリク酸ナトリウム(インタール、医薬品登録中止、抗アレルギー薬、1972年発売)、クロルフェニラミンマレイン酸塩(ポララミン、抗ヒスタミン薬、1953年発売)です。
ポララミンは第一世代抗ヒスタミン薬と呼ばれ、私が研修医(1990年代初頭)の頃には「口渇、便秘、眠気の副作用に注意すること」と言われていました。1994年に眠気の少ない、いわゆる第二世代と呼ばれるアレジオンが発売されてからは、第一世代は医療機関ではほとんど使用されず、副作用の眠気を利用して、市販の睡眠薬(正しくは睡眠改善薬、商品名ウット、ドリエルなど、一般名ジフェンヒドラミン、医薬品名レスタミン)として生き残っています。
市販の点眼薬を使うと眠くなったり頭が茫したりすることがあるので、使用は控えましょう。では処方される点眼薬はどうでしょうか。パタノール(オロパタジン)、アレジオン(エピナスチン、3500円、3割負担で1050円)は、いずれも第二世代の抗ヒスタミン点眼薬ですが、防腐剤(塩化ベンザルコニウム、ソルビン酸カリウム)が含まれています。このような点眼を毎日使用していると、目の周りに色素沈着をきたしたり、赤くかぶれたりすることがあり注意が必要です。
もう一種類、市販されていない点眼薬としては、ステロイドがあります。代表薬はフルメトロン(150円、3割負担で45円)。ステロイドは長期に連用すると眼圧上昇や細菌感染のリスクがありますが、目が充血して痒い時(結膜炎)は、1日2?3回点眼すれば1日で治ります。結膜炎の状態では、パタノールやアレジオンをいくら使っても治りません。
話をまとめます。
花粉症の治療は第二世代抗ヒスタミン薬を服用し、目が充血したり目脂が出たりするときだけ、ステロイド点眼を1?2日使用することをお勧めします。ステロイドは毎日点眼することは控えます。目が乾いたらあくびをするようにして涙の分泌を促します。抗ヒスタミン薬を服用していれば、涙の中に微量ですが第二世代抗ヒスタミン薬の成分が含まれるので目薬の代わりになります。
コンタクトレンズ装着中に点眼してもよいかという質問をよく受けますが、点眼薬に含まれる防腐剤はその粒子が大きいため、レンズと角膜の間に入ると角膜を傷つけることがあるので、どんな種類のコンタクトレンズでも外した状態で点眼するのが理想です。コンタクトレンズ装着中に乾燥が気になる方は、ヒアルロン酸含有の点眼薬(ヒアレインミニ、防腐剤無添加、1個11.8円、1ヶ月分60個で自己負担424円)をおすすめします。
この季節は風も強いので、本当なら眼鏡をかければいいのでしょうが、マスクのせいでメガネが曇るのでいけませんね。やはり基本は目を乾かさないように、30分に一度ぐらいは仕事の手を休めて、伸びをしながらあくびををすることでしょうか。目薬を使う代わりに努めてあくびをしましょう。
書き忘れましたが、花粉症の治療で最も有効なのはステロイド点鼻薬(アラミスト)です。
以上です。
2022年4月から、パワハラ防止法が中小企業に於いても施行されます。
パワハラ防止法とは、改正労働施策総合推進法の通称です。 パワーハラスメント防止のための雇用管理上の措置が、企業にはじめて義務付けられました。大企業では2020年6月から施行されています。
企業における職場におけるパワハラ防止措置として
1.事業主の方針を周知・啓発
2.相談体制の整備
3.迅速で適切な事後対応
4.その他
となっています。
パワハラ指針では、職場におけるパワハラは、以下のように定義されています。
職場において行われる
@優越的な関係を背景とした言動であって、
A業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
B労働者の就業環境が害されるものであり、
@からBまでの要素を全て満たすもの(セクハラと異なり、客観性が求められます)
代表的な言動の類型として、6つの類型が例として示されています。
(1)身体的な攻撃 暴行や障害など
(2)精神的な攻撃 人格を否定するような言動、名誉毀損や侮辱、暴言など
(3)人間関係からの切り離し 仲間外しや無視など、職場での孤立を招くもの
(4)過大な要求 業務上不要なことや不可能なことの強制など
(5)過少な要求 程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
(6)個の侵害 私的なことに過度に立ち入ること
厚生労働省「あかるい職場応援団」実施の調査データ(平成28年)によると、過去3年間に、実際にパワーハラスメントに関する相談を1件以上受けたことがある企業は回答企業全体の49.8%で、その8割がパワハラに該当するものでした。
今回特筆すべきことは、パワハラに起因する精神障害の労災認定基準も明確化された、点です。パワハラは精神的なストレスをもたらします。パワハラ防止法の改正においてパワハラの定義が明確化されたことを受けて、パワハラに関連する精神障害に関する労災認定基準も明確化されました。
具体的には、労災認定基準の要件の一つである「業務による心理的負荷」について評価表の中に「パワーハラスメント」という項目が新設されました。これにより、パワハラに起因する精神障害について、労災の認定判断がしやすくなりました。
昨年12月「部下を褒めない、叱らない、命じない。ー新しいリーダー論」が上梓されました。アドラー心理学の岸見一郎先生が執筆しています。要約しますと、
以下抜粋ーーー
リーダーと部下(メンバー)は対等である。
リーダーは次の3つの原則を守らなくてはならないと「先生」は主張します。
◎ 叱ってはいけない
◎ ほめてはいけない
◎ 命令してはいけない
わたしは叱ることは必要でないと考えています。改善を求めなければならないことがあれば、言葉で伝えればいいのです。それも即効性を求めてはいけません。手間暇をかけていわないといけません。緊急を要することであったら止めないといけませんが、それですら言葉を使えばいいのであって、感情的になる必要はありません。
ーーー抜粋終わり。
褒めない、叱らない、命じない、ならどうするか。対話することが大切です。対話とは、会話の中でも特に共通の目的意識を持つものを指します。会社での対話は、会社をよくしようという共通の目的を持つことが特徴です。
対話するには、意見が異なったとしても相手を尊重し、価値観をより深く理解するために質問をし、建設的な発言を積み重ねることが重要です。
ITC技術の発展によって世代間に価値観の相違が生まれ、対話にすれ違いが生じることが多くなっています。
生まれた年代別に
X世代(現代社会の中心 1965-80年頃の生まれ 42-57才) 高度成長、テレビ、電話、年功序列、努力、
Y世代(ミレニアル世代 1980-95年頃の生まれ 27-41才)、氷河期、インターネット、メール、ゆとり、
Z世代(デジタルネイティブ世代 1996年以降の生まれ 26才以下)スマホ、チャット、多様性、
などと分類されます。常識とされる知識や社会情勢は常に変化していくということです。
ちなみに私などX世代の前はベビーブーム世代(1945-1964)というそうです。
対話をする上で大切なことは、お互いの価値観を尊重し、意見が異なる時は質問を繰り返し、時間をかけて目的に到達させることです。これらの価値観の相違を理解していないと、良かれと思って教えたことがパワハラになるかもしれません。
X世代「受話器は静かに置きなさい」
Z世代「受話器って何ですか?」
以上です。
(参考文献)
明るい職場の応援団(厚労省)
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/
叱らない、褒めない、命じない。新しいリーダー論
2021年12月 岸見一郎著
“GENERATION X”
1951年 Robert Capa
季節による気分の落ち込みは秋から冬に向けて起こりやすく、寒さや日照時間の減少が原因であることはよく知られています(冬季うつ病)。それとは反対に春から夏にかけて気分が落ち着かなくなったり、やる気がなくなるのが、いわゆる五月病(spring fever)です。spring feverをオックスフォード新英英辞典で調べると「a feeling of restlessness and excitement felt at the beginning of spring」と定義されています。
警察庁の自殺統計に基づく厚労省の分析では、毎年(令和2年を除く)4-6月に自殺者がピークになっています*1。米国や英国においても4-5月が一番多いことがわかっています。個人的な理解としては「入社後または部署異動後の緊張感が、春の大型連休によって緩んでしまうことが原因では」と考えていましたが、春特有のストレス要因がありそうです。
春に見られる変化は大きく3つあります。1)日照時間増加、気温の上昇、変わりやすい天気 2)新たなスタート、お祭り気分、大型連休 3)生命の息吹です。これらは一般にはワクワクするような前向きの季節と捉えられますが、心身の疲労がある人にとっては受け止め方が変わってきます。
1)春の日照時間の増加によって、脳内の意欲に関連する神経伝達物質(特にセロトニン)が増加し、意欲が出る場合もあれば自律神経を過度に興奮させ、落ち着きがなくなることがあります。また日が長くなることで、睡眠時間が短くなり体の疲れが溜まります。英語では五月病をspring fatigueと表現することもあります。
2)新たなスタートやお祭り気分の緊張感や気分の高揚が、心身の疲労を招きます。
3)哺乳類は春になると活動的、性的ホルモンが高まるように生物時計が仕組まれています。
このように春は心身の疲労をきたしたり、気分を不安定にする要素があるのです。
5月病になりやすい人*2
性差 女性がなりやすく、症状は男性の方が重症化すると報告されています。
年齢 男女ともに20代、40代女性、50代男性
その他、うつ病の既往歴、家族歴、生活環境の変化、飲酒歴、花粉症、真面目で内向的な性格の人、死別経験、結婚、仕事の部署異動
五月病を予防するために(疲れにくい体づくり)*2
睡眠 : 遮光カーテン、部屋の風通し、涼しい寝具、バックグラウンドサウンド
運動 : 体が熱をもたない水泳、涼しい室内でのストレッチ
食事 : 食事量を7?8割に抑える、アルコールを控える
日課 : 毎日コツコツ続ける(例:読書、習い事、資格などの勉強、ストレッチ)
体験 : 瞑想、旅行、美術館、映画、コンサートなど
交流 : 気のおけない仲間や信頼する人と話すこと
霊的活動 : お墓参り、神社仏閣参りなど
考え方:まあいいか、とりあえずやろう
漢方 : 八味丸、六君子湯、芍薬甘草湯
言いたいこと:五月病は環境の変化だけでなく、生物学的な原因が関与しているため、環境調整だけでは解決しないことがあります。症状を治すためには、環境調整と同時に体調管理が重要です。不眠や倦怠感が続く方は、放っておかず産業医にご相談ください。
以上です。
参考文献:
*1 厚労省(令和4年4月8日発表)https://www.mhlw.go.jp/content/202112-sokuhou2.pdf
*2 The Emotional Calendar: Understanding Seasonal Influences and Milestones to Become Happier, More Fulfilled, and in Control of Your Life by John R Sharp 2011
毎日うだるようなあつさで疲れが抜けませんね。この時期に頭痛持ちの方は症状が悪化することが多いです。今日のテーマは頭痛の原因と対処法です。
1. 週末の頭痛
月曜日から金曜日まで10時間労働で、体調は万全なのに、土曜日に横になって起きると、頭がガンガンしている。なぜでしょう?
それは、1週間の緊張がほぐれると、ストレスホルモンの濃度が下がり、神経伝達物質(脳の化学伝達物質)が急激に放出されるからです。これが血管を収縮させ、拡張させるインパルスを送るので、頭痛が起こるのです。
対処法 週末に寝だめをしないようにしましょう。一度に8時間以上寝ると、頭痛を引き起こす可能性があります。週末にすべてを詰め込むのではなく、平日にヨガのクラスなどリラックスできる時間を取り入れましょう。
2. 怒りを溜め込む
怒ると首の後ろや頭皮の筋肉が緊張して、頭のまわりが帯状に締め付けられるような感覚になります。これは、緊張型頭痛のサインです。
対処法 怒りを感じ始めたら、深くゆっくりと呼吸します。鼻から息を吸い、口から吐き出すと、頭と首の筋肉がリラックスします。
3. 姿勢の悪さ
姿勢が悪いと、背中の上部、首、肩が緊張し、頭痛の原因になります。一般的には、頭蓋骨の付け根がズキズキと痛み、時には顔、特に額に閃くこともあります。
治し方 長時間、同じ姿勢で座ったり立ったりしないようにしましょう。背筋を伸ばして座り、腰を支えてください。受話器を頭と肩の間に挟むと、筋肉が緊張して頭痛を引き起こすことがあるので、長時間電話をする場合は、専用のヘッドセットの使用を検討してください。
4. 香水
家事で頭痛がすると思っているなら、それは正しいかもしれません。香水や芳香剤などの家庭用洗剤には、頭痛を引き起こす可能性のある化学物質が含まれています。
どうすればいいのか。特定の匂いで頭痛が起こる人は、香水や香りの強い石鹸、シャンプー、コンディショナーを避けましょう。芳香剤や家庭用洗剤は無香料のものを使い、家ではできるだけドアや窓を開けておく。同僚の香水が気になる場合は、職場のデスクに扇風機を置くとよいでしょう。
5. 天候不順(熱中症含む)
頭痛になりやすい人は、灰色の空、高い湿度、気温の上昇、嵐などが、頭の痛みをもたらす可能性があります。
天候の変化による気圧の変化は、脳内の化学的・電気的な変化を引き起こすと考えられています。これが神経を刺激し、頭痛につながるのです。
どうすれば治るのか 天気を変えるためにできることはあまりありません。しかし、天気予報を見ることで、頭痛が起こりそうな時期を予測し、鎮痛剤を準備しておくことができます。
6. 歯ぎしり
夜中に歯ぎしりをすると(医学的名称はブラキシズム)、顎の筋肉が収縮して鈍い頭痛が起こります。
対処法 歯医者で、睡眠中に歯を保護するマウスガードを装着してもらうことができます。価格は5000円ぐらいです。筋肉を緩める眠り薬も有効です。
7. 明るい光
明るい光やまぶしい光、特にチカチカする光は、片頭痛を誘発する可能性があります。これは、明るい光やチカチカする光が、脳内の特定の化学物質のレベルを上げ、片頭痛中枢を活性化させるからです。
対処法 サングラスは光の強度を下げるのに効果的で、室内でも屋外でも使用できます。また、偏光レンズはまぶしさを軽減するのに役立ちます。
仕事場では、コンピュータのモニターを調整するか、グレアスクリーンを装着してください。特定の照明を消したり、移動させたりできるかもしれません。それができない場合は、オフィスで座る場所を変えてみましょう。蛍光灯はちらつきやすいので、可能であれば白熱灯色に変えるのも有効です。
8. 食べ物が引き金になる
赤ワイン、チーズやチョコレートには、片頭痛を引き起こす可能性のある化学物質(チラミン)が含まれています。チラミンは血管収縮作用がありますが、その作用が切れた後、血管が拡張して頭痛を誘発します。
対処法 片頭痛の引き金となる食品を日記に記録し、その食品が頭痛の原因であることが分かったら、数ヶ月間その食品を食べないようにして、頭痛が少なくなるかどうかを確認します。
9. 重量挙げ
ジムなどでで重いバーベルを上げた後、激しい頭痛が出現することがあります。血圧が急激に上がり、脳内の圧が高まることが原因です。頭痛が数日続くこともあります。脳圧亢進によって
10. アイスクリーム
アイスクリームをかじるとき、おでこに鋭い痛みが走ることはありませんか?アイスクリーム頭痛は、冷たいものが口の中や喉の奥に移動することによって起こります。急激に収縮した血管が広がる時に痛みを感じます。
まとめ
頭痛は、頚部や頭蓋骨周囲の筋肉の炎症(酸素不足)または脳血管収縮や拡張が根本原因となります。筋肉の緊張はカルシウムイオンによって高まりますが、カルシウムと同じ2価の陽イオンであるマグネシウムを摂取することで、頭痛の頻度を激減させる可能性があります。酸化マグネシウムという緩下剤で市販もされています(ビオフェルミン酸化マグネシウム約1000円)。寝る前に一粒飲むだけで十分です。
そのほか高価な頭痛薬が何種類も上梓されていますが、頭痛でお困りの方はまずマグネシウムを是非試してください。
以上です。
あなたは1日のうちで「考えること」と「感じること」のどちらが多いでしょうか。考える時は「言葉」が必要であり、感じるときは「言葉」より「こころ」が働きます。
相手の顔が見えないコミュニケーションに溢れている現代では、圧倒的に言葉の処理に追われて、常に何かを考えている状態かもしれません。一方で、素晴らしい風景を眺めているときには、「わーっ」と感動して言葉にならないことがあります。
以前の健康一口メモで、デフォルトブレインネットワーク(DBN)という脳のアイドリング状態について取り上げたのを覚えているでしょうか。人間は過度に集中しすぎると、脳がオーバーヒートを起こし、高次脳機能が一時的に低下してしまうのです。高次脳機能とは、注意、記憶、学習、計画遂行(てきぱきと仕事をこなすこと)、感情などを指します。
DBNは、車のエンジンで言えばアイドリングのような状態で、アクセルを踏んでいない時でも(集中していない時でも)静かに働いている、潜在的な脳の機能です。
脳内に保存されている情報をスキャンする状態であるため、思わぬアイデアが閃いたり、環境変化に対応しやすくなる、考えが柔軟になることがわかっています。集中が長時間にわたると、DBNが働かず、他人との柔軟な交流が図れなくなります。集中しない時間(ぼんやり時間)が大切なのです。
ただ仕事中にぼんやりすることはできません。それでは手っ取り早くDBN の状態に導く方法はないのでしょうか。
前置きが長くなりましたが、今日のテーマはEMDR (Eye Movement Desensitization and Reprocessing : 眼球運動による脱感作と再処理法)です。名前は長ったらしくて分かりにくいと思いますが、方法は至って単純です。目を閉じて、眼球を左右に規則正しく動かすだけです。数十秒も続ければ十分です(正式なセラピーは1時間以上かかりますが)。
不安や恐怖などの不快な感情は、最終的に前頭葉(前頭前野)という脳の表面で感知されますが、眼球を動かすことにより、動眼神経中枢である中脳という脳の深部が活性化されます。それにより、脳の表面の血流が低下し、不快な感情が消し去られてしまうのです。
EMDRは戦争帰還兵やレイプ被害者などに生じるパニック発作の治療に用いられています。本来はメトロノームや治療者の声に合わせたり体の一部を自らタップしながら行います。このようにすることで、脳内のパニックに至る神経ネットワークをリセットさせると考えられています。
いずれにせよ「疲れたな」「いろいろ考えて眠れないな」という時に、数十秒でも良いのでやってみると結構頭がすっきりします。私も先日歯科治療中に、歯をウィーン、ガリガリと削られて体がこわばっていた時に目を閉じて左右に動かしていましたら、これまでの恐怖心が半分ぐらいに緩和されました。
皆さんも是非電車の中で、布団の中で、試してみてください。
以上です。
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