咳そうに関するガイドライン2版(2009年)
長びく咳について
咳のことを医学用語で「がいそう(咳嗽)」といいます。
日本呼吸器学会では咳嗽をその持続時間により、@急性咳嗽、A遷延性咳そう(3週〜8週)とB慢性咳そう(8週以上)に分類しています。
咳の持続時間が長くなるに従い、感染症よりもアレルギーなどの頻度が高くなります。
咳喘息とは
咳喘息とは、喘鳴(ぜんめい)や呼吸困難を伴わない慢性咳そう(慢性の咳)
が唯一の症状です。
呼吸機能は正常、気道過敏性軽度亢進、気管支拡張薬が有効で定義される喘息の亜型です。
咳喘息の診断基準
1.喘鳴を伴わない咳が3週間異常持続、聴診上も喘鳴を認めない。
2.気管支拡張薬が有効。
咳喘息の治療
第一選択は吸入ステロイドです。
咳喘息は数年のうちに30%の患者が喘息に移行するため、吸入ステロイドによる維持療法を2年間実施することが推奨されています。
遷延性、慢性咳そうは、一部が典型的喘息へ移行する咳喘息を含み、しつこく続く咳は日常生活に支障をきたすため軽視できない。
咳喘息の鑑別診断
百日咳菌やマイコプラズマ肺炎など乾いた咳をきたす感染症があります。
疑わしい場合はマクロライド系抗生物質(クラリスロマイシンやジスロマック)を併用します。
じんましんや花粉症を持っている人は咳喘息になりやすく、アレルギーの強さを血液検査で調べることも検討します。
喘息予防・管理ガイドライン2018
喘息とは
気道の慢性炎症を本体とする疾患。
気道過敏性亢進と気道の収縮(リモデリング)により喘鳴、呼吸困難および咳、痰をきたす。
咳喘息との違いは喘鳴、呼吸困難を伴うこと。
喘息の管理目標
I. 症状のコントロール→発作や喘息症状がない状態を保つ(努力呼気量PEVが予測値の80%以上)。
II. 将来のリスク回避→呼吸機能の維持、喘息死の回避、治療の副作用回避。
喘息の治療ステップ
第1ステップ択は吸入ステロイドと抗ロイコトリエン薬(炎症を抑える薬、じんましんは花粉症で使われる。
第2第3ステップは長時間作用型ベーター遮断薬(LABA)、長時間作用型ムスカリン遮断薬(LAMA)テオフィリン製剤。
第4ステップでは抗IgE抗体(オマリズマブ(ゾレア))、、抗インターロイキン5抗体(メポリズマブ(ヌーカラ))、経口ステロイドを使用する。
喘息の鑑別診断
1.熱がある→細菌性肺炎、ウイルス性肺炎
2.咳の割には喘鳴が著しくない→非定型性肺炎(マイコプラズマ肺炎、レジオネラ肺炎)、過敏性肺臓炎(カビなどによるアレルギー)
3. 喘息以外の肺疾患(間質性肺炎、びまん性細気管支炎、肺がんなど)
4.肺以外の疾患(逆流性食道炎、心不全など)
5.心因性の咳嗽(除外診断、ストレスに伴う喉頭違和感)
よくあるご質問
喘息は子供の病気ではないですか?
小児喘息は特定のアレルゲン(アレルギーのもと、ハウスダスト、食物など)によるものが多く、中学生頃までに一旦治ります。大人の喘息の好発年齢は40歳と言われていて、不特定のストレス(かぜ、暑さ、精神的ストレス)などがきっかけで、気管支粘膜が腫れてきます。じんましんや花粉症の体質の人は気管支粘膜も敏感であり、喘息、咳喘息になりやすいです。
ステロイド吸入は体に悪影響はありませんか?
ステロイドの吸入薬は軟膏などと異なり、粘膜上皮細胞から分泌される粘液のため、自然に喀出されますので、短期間の吸入であれば副作用はほとんどありません。妊娠を考えている方にも安全に使用できます。
ステロイド吸入ですぐに咳は止まるのでしょうか?
ステロイド吸入は気道粘膜の炎症を抑えるものですので、完全に咳が止まるまで1−2週間かかることがあります。はじめの2−3日咳止めを併用することもあります。
以前すぐに咳が止まったので、咳止めだけほしいのですが?
一般の鎮咳薬(コデインリン酸やデキストロメトルファン)などは延髄の咳中枢を抑制しますので咳は止まりますが、気道の炎症を治すことはできません。鎮咳薬を中止すると咳がぶり返すことが多く、ながびく咳の根本治療とは言えません。咳止めを長期間服用すると、分泌物が肺胞内にたまり肺炎に至ることがあります。
ステロイド吸入はいつまでするのでしょうか?
当院ではアズマネックス(100μg)を1日3回各2吸入ずつ(計600μg)吸入していただきます。1本60回分ですので10日分になります。咳が少しでも残っているときは、気道の炎症が完治しておりませんので1ヶ月程度継続することをおすすめします。咳そうに関するガイドライン2版では、咳喘息が喘息に移行するのを防ぐため、2年間は吸入を継続することが推奨されています。
ステロイド吸入はいつまでするのでしょうか?
当院ではアズマネックス(100μg)を1日3回各2吸入ずつ(計600μg)吸入していただきます。1本60回分ですので10日分(3割負担で750円程度)になります。咳が少しでも残っているときは、気道の炎症が完治しておりませんので1ヶ月程度継続することをおすすめします。
百日咳との区別はどのようにするのでしょうか?
百日咳は百日咳菌の感染により長期間咳が続きますが、咳喘息と異なり息を吸うときに独特の狭窄音が聞こえます。咳喘息では吐くときにピューという気管支狭窄音が聞こえます。百日咳の診断は喉をこすって細菌を培養したり、血液検査を2回行う必要があります。子供の百日咳は息を吸う時の音が「犬の遠吠え」様だったり、咳き込んで吐いてしまうなど特徴的であり、血液検査を行わずに診断できますが、成人の場合は症状がはっきりしないため、抗生物質を処方して効果を見ます(診断的治療)。抗生物質が無効の場合は咳喘息と考えます。