その71 しなやかな血管をつくりましょう
高血圧で通院中の方に「胸のレントゲンを撮りましょう」と勧めると「人間ドックでやっ
たばかりです」と答える方がいます。
下の2枚の写真をご覧ください。当院に高血圧で通院中のOさんの胸部レントゲン写真で
す。左は2018年右は2025年に撮影したものです。

我々循環器専門医が何を見てるかと言うと、肺、骨はもちろんですが、心臓の大きさや形
の経時変化です。具体的には,
胸の幅と心臓(写真真ん中のひょうたんみたいな白い影)の幅の比率(心胸郭比:CTR Cost
Thoracic Ratio)を計測します。下の図はそれを計測したものです。

2018年は46.7%、2025年は45.1%となっています。7年間でCTRが1.6%減少しています。心
臓が小さくなっているのです。心臓はゴム風船のような臓器で、その大きさは体の環境に
より、短時間で変化します。
CTR50%以上を心陰影拡大といい、心臓に負担がかかっていることを示します。心陰影が
拡大している(拡大していなくても)ときは、1)心肥大 心臓の壁が厚くなっている、2)心拡
大 心臓の内腔が広がっている、と2つの病態が考えられます。

心肥大は、心臓の肥満状態で酸素消費が高まるので、息切れや胸痛の原因となります。心
拡大は、心臓の筋肉が減少しているため、収縮力が低下し体に循環する血液量が低下し、
息切れやむくみをきたします。胸部X線では心臓の影を見ていますので、心臓の構造を確
認するために、超音波検査を行います。胸にジェルを塗って、プローべより超音波を当て
て、心臓の断面を観察して計測します。
尚、胸部X写真による放射線被曝は0.1mSv(シーベルト)で、年間自然放射線被曝量
2.1mSvと比べても十分に低く(胸部CTは5mSv)、年間100mSv以下の被曝では健康影響の明確
な証拠はないと言われています*。怖がらずに進んで検査を受けましょう。

心臓は身体中に血液を起きるポンプですが、心臓への負担は、心臓に入ってくる血液量
(前負荷)と心臓から出てゆく時の抵抗(後負荷)の程度に左右されます。前負荷は、血液量
に規定されるので、肥満や塩分を取り過ぎると大きくなります。後負荷は動脈硬化(高血
圧、糖尿病、脂質異常症)で血管が硬くなると高くなります。
心臓への負担を下げるためには、体重を適正に、塩分を取りすぎず、柔らかい血管を保つ
ことが大切です。
動脈硬化は、男性は40歳頃から女性は50歳頃から始まります。動脈硬化を防ぐには、
①食事 ②運動 ③ストレス軽減 ④睡眠 ⑤禁煙 が重要です。
健康診断で、肥満、高血圧、脂質異常、高血糖、心拡大などを指摘された方は、自分の心
臓の大きさ(CTR)を確認してみましょう。
冒頭にお示ししたOさんは、高血圧症、高コレ
ステロール血症で薬物治療中で、7年間毎月きちんと通院されています。週末は30分程度
ジョギングをしているとのことです。もうすぐ定年を迎えるとのことですが、心臓の状態
は7年前と比べて良くなっています。
動脈硬化は万病の元ですので、しなやかな血管をつくるよう生活習慣を心がけましょう。
以上です。
*日本放射線影響学会 「低線量放射線の人体影響」2019年
たばかりです」と答える方がいます。
下の2枚の写真をご覧ください。当院に高血圧で通院中のOさんの胸部レントゲン写真で
す。左は2018年右は2025年に撮影したものです。


我々循環器専門医が何を見てるかと言うと、肺、骨はもちろんですが、心臓の大きさや形
の経時変化です。具体的には,
胸の幅と心臓(写真真ん中のひょうたんみたいな白い影)の幅の比率(心胸郭比:CTR Cost
Thoracic Ratio)を計測します。下の図はそれを計測したものです。


2018年は46.7%、2025年は45.1%となっています。7年間でCTRが1.6%減少しています。心
臓が小さくなっているのです。心臓はゴム風船のような臓器で、その大きさは体の環境に
より、短時間で変化します。
CTR50%以上を心陰影拡大といい、心臓に負担がかかっていることを示します。心陰影が
拡大している(拡大していなくても)ときは、1)心肥大 心臓の壁が厚くなっている、2)心拡
大 心臓の内腔が広がっている、と2つの病態が考えられます。

心肥大は、心臓の肥満状態で酸素消費が高まるので、息切れや胸痛の原因となります。心
拡大は、心臓の筋肉が減少しているため、収縮力が低下し体に循環する血液量が低下し、
息切れやむくみをきたします。胸部X線では心臓の影を見ていますので、心臓の構造を確
認するために、超音波検査を行います。胸にジェルを塗って、プローべより超音波を当て
て、心臓の断面を観察して計測します。
尚、胸部X写真による放射線被曝は0.1mSv(シーベルト)で、年間自然放射線被曝量
2.1mSvと比べても十分に低く(胸部CTは5mSv)、年間100mSv以下の被曝では健康影響の明確
な証拠はないと言われています*。怖がらずに進んで検査を受けましょう。

心臓は身体中に血液を起きるポンプですが、心臓への負担は、心臓に入ってくる血液量
(前負荷)と心臓から出てゆく時の抵抗(後負荷)の程度に左右されます。前負荷は、血液量
に規定されるので、肥満や塩分を取り過ぎると大きくなります。後負荷は動脈硬化(高血
圧、糖尿病、脂質異常症)で血管が硬くなると高くなります。
心臓への負担を下げるためには、体重を適正に、塩分を取りすぎず、柔らかい血管を保つ
ことが大切です。
動脈硬化は、男性は40歳頃から女性は50歳頃から始まります。動脈硬化を防ぐには、
①食事 ②運動 ③ストレス軽減 ④睡眠 ⑤禁煙 が重要です。
健康診断で、肥満、高血圧、脂質異常、高血糖、心拡大などを指摘された方は、自分の心
臓の大きさ(CTR)を確認してみましょう。
冒頭にお示ししたOさんは、高血圧症、高コレ
ステロール血症で薬物治療中で、7年間毎月きちんと通院されています。週末は30分程度
ジョギングをしているとのことです。もうすぐ定年を迎えるとのことですが、心臓の状態
は7年前と比べて良くなっています。
動脈硬化は万病の元ですので、しなやかな血管をつくるよう生活習慣を心がけましょう。
以上です。
*日本放射線影響学会 「低線量放射線の人体影響」2019年