その66 寒くなる前に受けていただきたいワクチン
1. インフルエンザワクチン

下の図は東京都健康安全研究センターが発表しているインフルエンザの定点観測の5年比較グラフです。注目すべきは2020年4月頃から2022年の12月頃まで、インフルエンザがほぼゼロになっていることです。安倍元首相の提言で、2020年3月2日から春休みまで全国小学校の小中高校が、一斉に臨時休校になった時期と一致しています。


インフルエンザのピークは通常は1−2月ですので、年内にワクチンを打てば間に合いますが、昨年は11月頃から急に増えています。インフルエンザは核タンパクの種類によってA、B、C、D型があり、人に感染するのはA,Bのみです。A型は 膜タンパクの種類により、HA(ヘマグルチニン)16種類、NA(ノイアミニダーゼ)9種類の組み合わせで、144種類の亜型があります。その中でも1918年から40年続いたスペイン風邪(H1N1)、1968年から主流となった香港型(H3N2)、2009年に新型インフルエンザまたはブタインフルエンザと呼ばれたH1N1とB型2種類(山形型、ビクトリア型)が有名です。


その他稀ですが、H5N1やH7N9の鳥インフルエンザが人に感染する場合があります。インフルエンザワクチンは、通常H1N1、H2N3、B型2種類の4価のワクチンが使用されます。インフルエンザワクチンの最も大きな効果は、「重症化」を予防することです。 国内の研究によれば、65歳未満の発病予防効果は70~90%、65歳未満の発病予防効果は70~90%、65歳以上の高齢者福祉施設に入所している高齢者については34~55%の発病を阻止し、82%の死亡を阻止する効果があったとされています※1。

2. 帯状疱疹ワクチン

帯状疱疹は、幼少期に罹患した水痘ワクチンが、脊髄神経節内に感染し、疲労や感冒など免疫力が低下した際に帯状疱疹として神経に沿って出現します。米国では50歳で定期接種されていますが、日本では任意接種ですのでほとんど受ける方はいません。今までは水痘用の生ワクチンが使用されていましたが、2020年1月より不活化ワクチンの「シングリックス」が発売されました。製薬会社のコマーシャルが盛んに放映されていま
すので、問い合わせが大変増えています。

シングリックスは値段が高く(1回22,000円、2回接種)局所の腫れが強いので、免疫力低下がないと考えられる方は、これまで通り水痘ワクチン(1回8,800円)を選択されるのが良いと思います。


水痘ワクチンは2016年3月より「50歳以上の帯状疱疹予防」目的で接種可能となりました。生ワクチンですが、医師が必要と認めれば、他のワクチンと同時接種も可能です。シングリックスに比べますと発症予防効果が低い(10年で20%抑制)と言われていますが、米国の水痘ワクチンよりも力価が高く(約30,000pfu)、小児用をそのまま帯状疱疹ワクチンに使用できます。副反応もほとんどありません。ただし、生ワクチンのため、免疫不全の方(白血病、抗がん剤使用中、AIDS)には使用できません。

3. 肺炎球菌ワクチン

元々肺炎は、がん、心血管障害に次いで、がん死亡順位第3位の疾患でしたが、2017年から死因に誤嚥性肺炎肺炎が追加されたため、現在は第5位になっています。変わって2019年から老衰が3位の座をキープしています。成人肺炎のうち肺炎球菌が原因となるのは、17~24%と報告されています(国立感染症研究所)。肺炎ワクチンには小児用のプレベナーと成人用のニューモバックスがあります。前者は主に細胞性免疫を後者は体液性免疫を賦活すると言われており、65歳以上あるいは喘息、高血圧、糖尿病などの基礎疾患が亞ある方は誰でも打つことが推奨されています。

日本では65歳になると各自治体から接種券が届き、接種料が無料あるいは助成されますが、基礎疾患のある方はなるべく早めに打つことをお勧めします。米国疾病管理予防センター(CDC)によれば、

①65歳未満で喘息、高血圧、肥満、糖尿病、免疫抑制状態にある人は、プレベナーを最初に受け、8週後にニューモバックスを受けること、

②65歳未満で接種歴がある人は、5年以上空けて65歳以上でもう一度打つこと、

③65歳以上では1度接種すれば良い(平成21(2009)年より5年以上経過していれば再接種が禁忌でなくなりましたが、再接種による効果は証明されておらず、発熱、腫脹などの副反応を認めるため単独接種で良いとされています)、

と記されています。

4. 日本脳炎ワクチン

2004年までは日本脳炎ワクチンが任意接種でしたので、ほとんどの方が未接種になっています。日本脳炎ウイルスはコロナウイルスやインフルエンザウイルスと同じRNAウイルスです。日本人が欧米人と比較して新型コロナの発症率が低かったのは、日本脳炎ワクチンと種痘(天然痘ワクチン、1976年以降中止)のお陰と言われています。

(番外ワクチン)新型コロナワクチン

本年10月より65歳以上(65歳未満で身障1級程度の者含む)の定期接種(自己負担額は自治体による)が始まりました。コロナウイルスはRNAウイルスで、体内に過剰な抗原タンパクが産生されるため、臓器の炎症(心筋炎)や血栓(脳梗塞)など重大な後遺症をきたす可能性があります。

2024年9月6日の厚労大臣の記者会見で、新型コロナワクチンによる死亡認定者は777人に達しており、一人当たり4500万円の補償金が支払われています。2021年4月に高齢者から始まり、同年6月から対象年齢が12歳以上、2022年9月からは大人の3分の1の量で5歳から11歳も接種対象になりました。

現在日本で薬事承認されているものは、mRNA(ファイザー: コミナティ、モデルナ: スパイクバックス、第一三共: ダイチロナ)、遺伝子組み換え(武田: ヌバキソビット)、レプリコン(Meiji Seika ファルマ: コスタイベ)の5種類ありますが、今回は何故65歳以上のみ定期接種となったのでしょうか。医療従事者も任意の接種になっています。

まとめ(私見です)

インフルエンザは毎年、帯状疱疹は50歳から生ワクチンを10年毎、肺炎球菌は65歳から10年毎に2種類、日本脳炎は40歳から10年毎に受けるのが良いかと思います。それぞれのワクチンの発症予防効果は70%前後で決して高くはありませんが、副反応が少ないものを定期的に打つことが望ましいと考えます。
2024.10.11 17:32 | pmlink.png 固定リンク | folder.png 健康一口メモ

- CafeLog -