その62 体脂肪を減らす(王道なし)
体重計に乗るたびに、体重は標準値をキープしていますが、体脂肪率がどうしても減りません。体脂肪率の基準値は男性で10~20%、女性で20~30%です。標準体重は、BMI(22)×身長(m)の2乗;身長178cmの私なら、22×1.78×1.78=69.7kg と算出されます(現在72kg、BMI=22.8)。身長は同じでも体脂肪率が変わると、見た目も全然違います(下図)。
ω(オメガ)3脂肪酸ダイエット先日、50代の患者さんから、亜麻仁(あまに)油をスプーン一杯毎日飲み始めたら2週間で体重が2kg落ちました、という話を聞きました。なんでもテレビで話題になっている「ω(オメガ)3脂肪酸ダイエット」を実践されたとのことでした。私も早速始めてみましたw。
ω3脂肪酸は、常温で液体の不飽和脂肪酸(植物性脂肪)に分類され、常温で固体の飽和脂肪酸(動物性脂肪)と比較すると体内の脂肪を低下させ、健康的な油と言われています。実際に我々も診療で中性脂肪の高い患者さんにω3脂肪酸(EPA)を処方します。添付文書上は、服用によって中性脂肪を14~20%減少させたという臨床試験の結果が示されていますが、その薬を処方した感じでは、体重減少や中性脂肪低下への効果は実感できません。
よく肥満傾向の患者さんに食事について尋ねると「ご飯は少なめにして間食もしません」と答える人がいます。私は「体重を減らすには、①カロリー摂取を減らすか、②カロリー消費を増やすかのどちらかですよ」と説明していました。
糖質制限食
①でも②でもない、③糖質制限食(摂取カロリーは同じだが、糖質摂取の割合を50%以下にする)が糖尿病治療において注目されています。理屈としては、糖質を制限して有酸素運動を30分程度続けることで、エネルギー源が糖質から脂肪にスイッチして体内の脂肪も消費される、というものです。これも30分以上の有酸素運動なしに糖質制限のみ行っても効果はありません。糖質を制限し過ぎると、筋肉や脳の働きを弱めてしまうためよくありません。糖尿病診療ガイドラインによれば、糖質制限食の場合1日130g程度にするのがよいとされています。ちなみにご飯を茶碗に軽く1杯で糖質約50gです。これも、トータルの摂取カロリーが変わらない場合の効果は乏しいことが知られています。
ボディビルの食事
それでは、ボディビルダーはどうしているのでしょうか?なんと1日5~6回食事して4000から5000kcalを摂取(PFC管理:タンパク質35%、脂肪15%、糖質50%)し、体重の2~3倍程度のタンパク質をとるというのです。そのカロリーを消費するために、週に4~5回1~2時間のトレーニングをします。反対に大会前になると、摂取カロリーを1000kcalまで制限して体脂肪率を一桁まで落とすそうです。これでは、体に大きな負担となります。ボディビルダーの真似をしてプロテインパウダーの飲む人がいますが、普通の食事のままででそれをすると、カロリーオーバーになります。
まとめ
どうやら、体脂肪減少に王道はないようです。摂取総カロリーを制限し、糖質を控え、植物性タンパク質を増やすことで適正体重を保ち、植物性脂肪(亜麻仁油)を毎日とり、週に60分程度の汗をかくような運動と週3回の筋トレをコツコツ続けることが重要です。あるボディービルダーチャンピオンは「やる気がしないときでもやる精神力があるかどうかで決まる」と述べています。亜麻仁油を飲むだけではダメそうです。
以上です。
糖尿病診療ガイドライン2024
Low-Carbohydrate Diet Macronutrient Quality and Weight Change
JAMA Netw Open. 2023;6(12)
ω(オメガ)3脂肪酸ダイエット先日、50代の患者さんから、亜麻仁(あまに)油をスプーン一杯毎日飲み始めたら2週間で体重が2kg落ちました、という話を聞きました。なんでもテレビで話題になっている「ω(オメガ)3脂肪酸ダイエット」を実践されたとのことでした。私も早速始めてみましたw。
ω3脂肪酸は、常温で液体の不飽和脂肪酸(植物性脂肪)に分類され、常温で固体の飽和脂肪酸(動物性脂肪)と比較すると体内の脂肪を低下させ、健康的な油と言われています。実際に我々も診療で中性脂肪の高い患者さんにω3脂肪酸(EPA)を処方します。添付文書上は、服用によって中性脂肪を14~20%減少させたという臨床試験の結果が示されていますが、その薬を処方した感じでは、体重減少や中性脂肪低下への効果は実感できません。
よく肥満傾向の患者さんに食事について尋ねると「ご飯は少なめにして間食もしません」と答える人がいます。私は「体重を減らすには、①カロリー摂取を減らすか、②カロリー消費を増やすかのどちらかですよ」と説明していました。
糖質制限食
①でも②でもない、③糖質制限食(摂取カロリーは同じだが、糖質摂取の割合を50%以下にする)が糖尿病治療において注目されています。理屈としては、糖質を制限して有酸素運動を30分程度続けることで、エネルギー源が糖質から脂肪にスイッチして体内の脂肪も消費される、というものです。これも30分以上の有酸素運動なしに糖質制限のみ行っても効果はありません。糖質を制限し過ぎると、筋肉や脳の働きを弱めてしまうためよくありません。糖尿病診療ガイドラインによれば、糖質制限食の場合1日130g程度にするのがよいとされています。ちなみにご飯を茶碗に軽く1杯で糖質約50gです。これも、トータルの摂取カロリーが変わらない場合の効果は乏しいことが知られています。
ボディビルの食事
それでは、ボディビルダーはどうしているのでしょうか?なんと1日5~6回食事して4000から5000kcalを摂取(PFC管理:タンパク質35%、脂肪15%、糖質50%)し、体重の2~3倍程度のタンパク質をとるというのです。そのカロリーを消費するために、週に4~5回1~2時間のトレーニングをします。反対に大会前になると、摂取カロリーを1000kcalまで制限して体脂肪率を一桁まで落とすそうです。これでは、体に大きな負担となります。ボディビルダーの真似をしてプロテインパウダーの飲む人がいますが、普通の食事のままででそれをすると、カロリーオーバーになります。
まとめ
どうやら、体脂肪減少に王道はないようです。摂取総カロリーを制限し、糖質を控え、植物性タンパク質を増やすことで適正体重を保ち、植物性脂肪(亜麻仁油)を毎日とり、週に60分程度の汗をかくような運動と週3回の筋トレをコツコツ続けることが重要です。あるボディービルダーチャンピオンは「やる気がしないときでもやる精神力があるかどうかで決まる」と述べています。亜麻仁油を飲むだけではダメそうです。
以上です。
糖尿病診療ガイドライン2024
Low-Carbohydrate Diet Macronutrient Quality and Weight Change
JAMA Netw Open. 2023;6(12)