その55 咳の対処法
最近のニュースで、薬局から咳止め(鎮咳薬)をはじめ風邪薬の在庫が不足していることが報じらています。でもご安心ください。鎮咳薬は根本治療薬ではありません。今回のテーマは咳の対処法です。

咳は、気道内に入った異物を排出するための反射です。咳反射は、気管支粘膜が異物を感じた瞬間に、粘膜の知覚神経を通じて延髄に伝わり、横隔膜、肋間筋や腹筋を総動員して咳を出して異物を取り除こうとするのです。延髄は、大脳と脊髄の中間地点にあり、呼吸、嘔吐、嚥下、循環(心拍数)を司るセンターです。

市販されている鎮咳薬は、ほとんどが延髄の働きを弱めるための麻薬(コデイン、ヒドロコデイン)です。これらを長期的に服用すると眠気や便秘など副作用の他、薬を飲まないといられなくなる依存が形成されます。

また、気管支拡張目的で添加されているエフェドリンは、交感神経刺激剤(一種の興奮剤、血圧を上げ、心拍数を高める)ため、運動競技会で禁止薬物に指定されています。



令和5年2月8日付け薬生発0208第1号厚生労働省医薬・生活衛生局長通知により、「濫用等のおそれのある医薬品」の指定範囲が変更されました。

ジヒドロコデイン (麻薬)  メチルエフェドリン (興奮薬) ブロモバレリル尿素 (鎮静薬)

これらを含む薬については、一人一個(一箱または一瓶)の販売に限定されています。ブロモバレリル尿素は前回の一口メモ(鎮痛薬の安全な使い方)でお伝えした通り、鎮痛薬に添加されることがある依存性の強い鎮静薬です。

病院で処方される咳止めにもジヒドロコデイン、メチルエフェドリンが含まれているものがあります。中にはブロモバレリル尿素も配合された最強の咳止め(カフコデN)もあります。

では、咳の根本治療は何でしょうか。下の表に示しましたように、治療法はいろいろありますが、鎮咳薬は全く含まれていません。当院では、咳が苦しくて眠れないような時に、寝る前だけ鎮咳薬を補助的に処方しています。



長引く咳の9割は①と②です。だらだらと鎮咳薬を使わずに根本治療(吸入ステロイド)を受けましょう。

以上です。

濫用等の恐れのある医薬品について(厚労省ホームページ)
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001062520.pdf

ドーピング対照薬検索
https://www.data-index.co.jp/medsearch/anti-doping/
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