その50 気管支炎(咳止めは効きません)
梅雨時になると、咳の患者さんが多くなります。「もう花粉症の時期は終わったと思うんですけど」と不思議そうにされています。
花粉の時期(2月から4月)はスギやヒノキの胞子が原因となって、アレルギー反応を起こします。6月になるとエアコンのダストが原因となって、気管支粘膜の炎症を起こします。ダストの70%以上がトリコスポロンというカビであることがわかっています。
同じ気管支炎でも、花粉症によるものとカビによるものとでは、免疫の仕組みが異なります。前者はIgE(免疫グロブリンE)が担当し、後者はIgG(免疫グロブリンG)が担当します。
人間の生体内に備わる防御反応を免疫と呼びますが、その反応が過剰なものをアレルギーと呼びます。一般的には無害な物質に対し、過剰な免疫反応が起こると全身の毛細血管が拡張し、あらゆる粘膜が腫れてしまいます。その結果、涙、鼻水、咽頭痛、痰、咳など様々な症状が出ます。
皮膚の毛細血管が拡張すると「じんましん」となります。皮膚の血管の周りには、マスト細胞と呼ばれる、顆粒がいっぱいに詰まった細胞がちらばっていて、この細胞が顆粒を放出すると、血管が拡張して蕁麻疹を生じます。顆粒の中に含まれる主たる作用物質はヒスタミンと呼ばれるもので、皮膚の血管に働くと血管を拡張し、血漿成分を血管の外に漏れ出やすくします。またヒスタミンは痒み神経を刺激し、そのため蕁麻疹では痒みを伴います。
気管支粘膜の毛細血管が拡張すると気管支炎になります(図)。
気管支炎の病態
1.平滑筋の肥大
2.粘膜の腫脹
3.粘液の産生
以上の反応によって気管支内腔が狭くなり、息を吐く時に「ピューピュー」と笛のような音がします。気管支喘息などとも言います。
先ほどのヒスタミンが粘膜上に分泌されると、気管支粘膜の感覚過敏が起こります。通常誤って気管に水が入ったりすると誰でも激しくむせますが、気管支炎の場合は粘膜表面の感覚が敏感になっているため、息を吸って風が当たっただけでもむせこんでしまいます。
気管支炎になりやすい人
1. 体質→じんましん、花粉症などアレルギー体質の人。
2. 疲労→疲労状態では白血球の働きが活発になり、炎症物質を放出しやすくなる。
3. 暴露→アレルギーのものになる物質に長時間さらされている人(農夫肺、塗装工肺、
きのこ栽培者肺、室内の埃やカビ、ペット)
気管支炎の治療
1. 環境→原因物質を避ける。
2. 体調管理→疲労、アルコール、不眠などを避ける。自律神経の過緊張をとる。
3. 薬物→抗ヒスタミン、抗ロイコトリエン、吸入ステロイド。咳止めは根本治療ではない(麻薬系物質で脳の反応を鈍くする)ので、長期間の服用は避けてください。
完治するまでに1ヶ月以上かかることが多いので、すぐに治らないからといって治療を中断しないようにしましょう。慢性炎症がある場合は半年以上薬物療法が必要です。風邪を引いたら咳が残る人は、気管支炎になりやすい人です。
気管支炎の後発年齢は小児期(7−14歳)と40歳以降の2つの山があります(理由は不明)。高熱がある場合はウイルスや細菌感染による咳が考えられますが、解熱後も咳が続く場合は上記の薬物治療が必要となります。
上記の通り、一旦長引く咳を経験した場合は、それ以降風邪を引くたびに咳をが残るようになります。早めに受診して、上記の薬物を処方してもらいましょう。少なくとも薬局で咳止めを買うことはやめてください。
以上です。
花粉の時期(2月から4月)はスギやヒノキの胞子が原因となって、アレルギー反応を起こします。6月になるとエアコンのダストが原因となって、気管支粘膜の炎症を起こします。ダストの70%以上がトリコスポロンというカビであることがわかっています。
同じ気管支炎でも、花粉症によるものとカビによるものとでは、免疫の仕組みが異なります。前者はIgE(免疫グロブリンE)が担当し、後者はIgG(免疫グロブリンG)が担当します。
人間の生体内に備わる防御反応を免疫と呼びますが、その反応が過剰なものをアレルギーと呼びます。一般的には無害な物質に対し、過剰な免疫反応が起こると全身の毛細血管が拡張し、あらゆる粘膜が腫れてしまいます。その結果、涙、鼻水、咽頭痛、痰、咳など様々な症状が出ます。
皮膚の毛細血管が拡張すると「じんましん」となります。皮膚の血管の周りには、マスト細胞と呼ばれる、顆粒がいっぱいに詰まった細胞がちらばっていて、この細胞が顆粒を放出すると、血管が拡張して蕁麻疹を生じます。顆粒の中に含まれる主たる作用物質はヒスタミンと呼ばれるもので、皮膚の血管に働くと血管を拡張し、血漿成分を血管の外に漏れ出やすくします。またヒスタミンは痒み神経を刺激し、そのため蕁麻疹では痒みを伴います。
気管支粘膜の毛細血管が拡張すると気管支炎になります(図)。
気管支炎の病態
1.平滑筋の肥大
2.粘膜の腫脹
3.粘液の産生
以上の反応によって気管支内腔が狭くなり、息を吐く時に「ピューピュー」と笛のような音がします。気管支喘息などとも言います。
先ほどのヒスタミンが粘膜上に分泌されると、気管支粘膜の感覚過敏が起こります。通常誤って気管に水が入ったりすると誰でも激しくむせますが、気管支炎の場合は粘膜表面の感覚が敏感になっているため、息を吸って風が当たっただけでもむせこんでしまいます。
気管支炎になりやすい人
1. 体質→じんましん、花粉症などアレルギー体質の人。
2. 疲労→疲労状態では白血球の働きが活発になり、炎症物質を放出しやすくなる。
3. 暴露→アレルギーのものになる物質に長時間さらされている人(農夫肺、塗装工肺、
きのこ栽培者肺、室内の埃やカビ、ペット)
気管支炎の治療
1. 環境→原因物質を避ける。
2. 体調管理→疲労、アルコール、不眠などを避ける。自律神経の過緊張をとる。
3. 薬物→抗ヒスタミン、抗ロイコトリエン、吸入ステロイド。咳止めは根本治療ではない(麻薬系物質で脳の反応を鈍くする)ので、長期間の服用は避けてください。
完治するまでに1ヶ月以上かかることが多いので、すぐに治らないからといって治療を中断しないようにしましょう。慢性炎症がある場合は半年以上薬物療法が必要です。風邪を引いたら咳が残る人は、気管支炎になりやすい人です。
気管支炎の後発年齢は小児期(7−14歳)と40歳以降の2つの山があります(理由は不明)。高熱がある場合はウイルスや細菌感染による咳が考えられますが、解熱後も咳が続く場合は上記の薬物治療が必要となります。
上記の通り、一旦長引く咳を経験した場合は、それ以降風邪を引くたびに咳をが残るようになります。早めに受診して、上記の薬物を処方してもらいましょう。少なくとも薬局で咳止めを買うことはやめてください。
以上です。