その44 この冬受けていただきたいワクチン
新型コロナやインフルエンザのワクチンは皆さん接種されていると思いますが、今回はその他にぜひ受けていただきたいワクチンをご紹介します。

それは、1)帯状疱疹ワクチン、2)肺炎球菌ワクチンと3)日本脳炎ワクチンです。

1)帯状疱疹ワクチン
帯状疱疹は、幼少期に罹患した水痘ワクチンが、脊髄神経節内に感染し、疲労や感冒など免疫力が低下した際に帯状疱疹として神経に沿って出現します。米国では50歳で定期接種されていますが、日本では任意接種ですのでほとんど受ける方はいません。

今までは水痘用の生ワクチンが使用されていましたが、2020年1月より不活化ワクチンの「シングリックス」が発売されました。製薬会社のコマーシャルが盛んに放映されていますので、問い合わせが大変増えています。

シングリックスは値段が高く(1回22,000円、2回接種)局所の腫れが強いので、免疫力低下がないと考えられる方は、これまで通り水痘ワクチン(1回8,800円)を選択されるのが良いと思います。

水痘ワクチンは2016年3月より「50歳以上の帯状疱疹予防」目的で接種可能となりました。生ワクチンですが、医師が必要と認めれば、他のワクチンと同時接種も可能です。シングリックスに比べますと発症予防効果が低い(10年で20%抑制)と言われていますが、米国の水痘ワクチンよりも力価が高く(約30,000pfu)、小児用をそのまま帯状疱疹ワクチンに使用できます。副反応もほとんどありません。ただし、生ワクチンのため、免疫不全の方(白血病、抗がん剤使用中、AIDS)には使用できません。

<おすすめ>
50歳になったらなるべく早めに水痘ワクチンを打ちましょう。


2)肺炎球菌ワクチン 
元々肺炎は、がん、心血管障害に次いで、がん死亡順位第3位の疾患でしたが、2017年から死因に誤嚥性肺炎肺炎が追加されたため、現在は第5位になっています。変わって2019年から老衰が3位の座をキープしています。

成人肺炎のうち肺炎球菌が原因となるのは、17〜24%と報告されています(国立感染症研究所)。

免疫には体液性免疫(主に血液中の警備)と細胞性免疫(細胞に入り込んだ病原体の警備)の2種類があります。細胞性免疫は生まれつき備わっており、不特定の病原体から体を守っています。それに対して体液性免疫は、特定の病原体に対するタンパク質(抗体)を作り、体を守ります。

肺炎ワクチンには小児用のプレベナーと成人用のニューモバックスがあります。前者は主に細胞性免疫を後者は体液性免疫を賦活すると言われており、65歳以上あるいは喘息、高血圧、糖尿病などの基礎疾患が亞ある方は誰でも打つことが推奨されています。


日本では65歳になると各自治体から接種券が届き、接種料が無料あるいは助成されますが、基礎疾患のある方はなるべく早めに打つことをお勧めします。

米国疾病管理予防センター(CDC)によれば、
①65歳未満で喘息、高血圧、肥満、糖尿病、免疫抑制状態にある人は、プレベナーを最初に受け、8週後にニューモバックスを受けること、
②65歳未満で接種歴がある人は、5年以上空けて65歳以上でもう一度打つこと、
③65歳以上では1度接種すれば良い(平成21(2009)年より5年以上経過していれば再接種が禁忌でなくなりましたが、再接種による効果は証明されておらず、発熱、腫脹などの副反応を認めるため単独接種で良いとされています)、
と記されています。

<おすすめ>
喘息、高血圧、糖尿病などの基礎疾患がある人は、65歳以前に肺炎球菌ワクチンを2種類打ちましょう。

3)日本脳炎ワクチン
平成6年までは日本脳炎ワクチンが任意接種でしたので、ほとんどの方が未接種になっています。日本脳炎ウイルスはコロナウイルスやインフルエンザウイルスと同じRNAウイルスです。日本人が欧米人と比較して新型コロナの発症率が低かったのは、日本脳炎ワクチンと種痘(天然痘ワクチン、1976年以降中止)のお陰と言われています。

実際、平成28年4月から定期接種になった北海道(昔はコダカアカイエカがいなかった)では、10万人あたりの新型コロナ発生率がダントツです(沖縄141人、東京418人、北海道1101人)https://covid-19.nec-solutioninnovators.com/

成人での接種は2回(少なくとも1週間空けて)行います。副反応はほとんどありません。幼少期に4回接種(3歳で2回、4歳で1回、9歳で1回)した人でも、ブースター(効果増強)として1回は接種しておくと、細胞性免疫が活性化して他のウイルスにもかかりにくくなります。当院スタッフも全員追加接種しています。当院では1回8,800円です。

<おすすめ>
成人の方は(子供の頃に4回接種した方でも)、日本脳炎ワクチンを追加で打ちましょう。平成9年より前に(青森県は平成14年より前、北海道では平成31年(令和元年)より前)生まれた方は、1週間から1ヶ月あけて2回接種が有効です。


水痘ワクチン、肺炎球菌ワクチン、日本脳炎ワクチンを3本同日に受けることが可能です。    以上です。
2022.11.16 15:16 | pmlink.png 固定リンク | folder.png 健康一口メモ

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