その32 咳喘息について ー長引く咳に咳止めは効きませんー
空気が乾燥して寒くなってきました。マスクをつける習慣がついて、気道の乾燥は緩和されているかもしれません。この時期になるとコンコンと咳き込む人が多くなってきます。定義上、3週間以上続く咳を遷延性咳嗽(がいそう=咳の医学用語)といい、レントゲン検査や血液検査の適応となります。

一般に、咳を訴えて病院に行くと、咳き止めが処方され、1週間続くと抗菌薬が追加されます。それでも治らないとレントゲンや血液検査が行われて、肺炎でないことが確認されます。それらの検査で異常がない場合は咳喘息と診断されます。

咳喘息という病名を聞いた事がありますか?喘息の軽いバージョンのことです。喘息では気管支の炎症により、気道(空気の通り道)が狭くなり、呼吸をする時にピューピュー音がします。喘息の人は横になると重力の関係で、気道の腫れが強くなり余計に苦しくなるので、机に伏せる様にして休まなければなりません。

私が研修医だった30年前頃は、夜になると多くの喘息患者さんが発作を起こして、救急外来を受診する人が多く、入院になる人も少なくありませんでした。1978年にステロイドの吸入が国内で発売されましたが、その使用は重症患者のみに限定されていました。2009年の喘息治療ガイドライン(JGL2009)で初めて、ステロイド吸入が軽症喘息の第一選択薬に推奨される様になったのです。それ以降、喘息発作で病院を受診する人は激減しました。

ステロイドという薬は、副作用が強いイメージがあるせいか「ステロイドはちょっと抵抗があるので、咳止めをください」という方もたまにいらっしゃいます。全ての咳止めは麻酔作用がありますので、眠くなったり物の見え方がおかしくなったりするなどの副作用があります。咳止めは、気管支の炎症によって起こりやすくなった咳反射を、脳を抑制することで抑える非根本的な治療です。ですから「1ヶ月以上咳止めを飲み続けているけど咳が止まりません」という方はたまにいらっしゃいます。

一方吸入ステロイドも副作用があります。薬を吸い込んだ後、うがいをしないと口内炎ができたり、カンジダというカビが喉に生える場合があります。これらの副作用は、吸入をやめなくても、薬ですぐに治りますので心配ありません。吸入直後にうがいをすることで防げます。吸入薬の中にステロイドに気管支拡張薬(βブロッカー)が追加されている合剤があり、気管支拡張薬は動悸や手の震えの副作用があります。咳喘息であればステロイド単剤で十分です(おすすめはアズマネックス)。

風邪を引くと咳が残るという人は、咳喘息の症状が疑われます。ぜひ呼吸器専門の病院で相談してみてください。特に花粉症が強い方、蕁麻疹がある方、小児喘息の既往がある方は要注意です。

以上です。
2021.12.03 19:43 | pmlink.png 固定リンク | folder.png 健康一口メモ

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