貧血とは
WHO基準で成人男性でヘモグロビン(Hb)13g/dl以下、成人女性ではHb 12g/dl以下
貧血の一般症状
1.酸素供給不足によるもの
頭痛、めまい、耳鳴り、易疲労感(つかれやすい)、倦怠感、こむら返り
2.代償機序によるもの
心拍出量増加→機能性心雑音、脈拍数増加→動悸、呼吸数増加→息切れ
3.赤血球数の減少によるもの
顔面蒼白(または黄色みがかって見える)、起立性低血圧、足のむくみ
体内の鉄の出納
・体重50kgの女性は約2gの鉄を体内に持っている。
・大部分が赤血球のヘモグロビンの中にあり、30%が貯蔵鉄。
・1日の食事中の鉄量は約10mgであり、そのうち1mgのみ吸収される。
・鉄は便、尿、汗などで1日1mg排泄される。
・女性の場合は月経のためさらに1日あたり0.5〜1mgが失われる。
(1日食事より吸収量1mg)−(1日排泄量1mg)−(月経による喪失1日換算で0.5mg〜1mg)=−0.5mg〜−1mg
ゆえに女性の場合、普通に食事をしていても1日に約0.5mg〜1mgの鉄が失われてしまうことになる。
体内の鉄の分布
男 80kg(mg) | 女 60kg(mg) | (%) | |
ヘモグロビン鉄 | 2,400 | 1,700 | 65 |
貯蔵鉄(フェリチン、ヘモシデリン) | 600−1000 | 0−300 | 30 | ミオグロビン | 150 | 120 | 3.5 | 酵素(シトクロム、カタラーゼなど) | 150 | 120 | 3.5 | 血清鉄 | 3 | 3 | 0.1 |
貧血の診断
体内の鉄の分布
小球性(MCV<80fl) | →フェリチン低下(<30μg/l) | →鉄欠乏性貧血 | |
→フェリチン増加 | →血清鉄低下 | →ACD(anemia of chronic disease) | |
→血清鉄増加 | →鉄芽球性貧血 | ||
正球性(80<MCV<100) | →網赤血球増加 | →クームス陽性 | →自己免疫性溶血性貧血 |
(急性出血後貧血以外) | →クームス陰性 | →遺伝性球状赤血球症(形態異常あり) | |
→発作性夜間血色素尿症(形態異常なし) | |||
→網赤血球低値(*) | →エリスロポエチン低値 | →腎性貧血 | |
→網赤血球低値 | →エリスロポエチン正常 | →再生不良性貧血、白血病 | 大球性(MCV>100fl) | →網赤血球増加なし | →ビタミンB12低下 | →巨赤芽球性貧血 |
→ビタミンB12欠乏性 | |||
低下なし | →アルコール中毒 |
(1999 Wintrobe's Clinical Hematology ; The anemia diagnostic atrategy)
鉄欠乏性貧血の治療
・自覚症状がなくても治療の適応になる。
・治療のゴールは貧血を治すだけでなく、貯蔵鉄(フェリチン)を正常化させること。
・隠れ貧血に注意。女性のヘモグロビン値の下限は11.5g/dlとされているが、貯蔵鉄が少ないとさらにヘモグロビンが低下する場合がある。貯蔵鉄が少ない場合、ヘモグロビン値を12g/dl未満は貧血と考える。
1.経口鉄剤
テツクールS 100mg 1日1〜2回 食前に内服(悪心などの症状があるときは食後でも可) 薬価 9.4円(自己負担は約3円)/錠 貯蔵鉄(フェリチン)正常化するまで服用する(約6〜12ヶ月)
空腹時に服用。摂取量の薬10分の1が吸収される。悪心、食欲低下の副作用がある。
2.注射用鉄剤
フェジン 40mg 経口薬剤による副作用が問題になると考えられるときに点滴、または緩徐静脈注射を行う。投与総量を計算し、計画的に投与する。投与総量=2.3*(15−Hb)*体重+500mg or 1000
mg (貯蔵鉄として)→ 10回に分けて点滴(所要時間は15分程度です)
Harrison's Int.Medicine 16th edition pp.586-592
3.除外診断
鉄欠乏性貧血の原因を確定するために@婦人科疾患の有無、A便潜血の有無を確認する。
Sanno Medical Clinic / 2-11-1-2513 Nagatacho Chiyoda TOKYO / +81-3-3580-5001 トップページへ