医療法人社団 松伯会 山王クリニック    内科、循環器科、精神科、皮膚科

東京都千代田区永田町2-11-1 山王パークタワー25階 tel 03-3580-5001 理事長 渡邉基樹 院長 鈴木努

「 @親切にA正確にB素早く 」を理念としているのクリニックです - - - 本院は千葉県匝瑳市にあります。

貧血とは

WHO基準で成人男性でヘモグロビン(Hb)13g/dl以下成人女性ではHb 12g/dl以下

貧血の一般症状

1.酸素供給不足によるもの
頭痛、めまい、耳鳴り、易疲労感(つかれやすい)、倦怠感、こむら返り

2.代償機序によるもの
心拍出量増加→機能性心雑音、脈拍数増加→動悸、呼吸数増加→息切れ

3.赤血球数の減少によるもの
顔面蒼白(または黄色みがかって見える)、起立性低血圧、足のむくみ

体内の鉄の出納

・体重50kgの女性は約2gの鉄を体内に持っている。
・大部分が赤血球のヘモグロビンの中にあり、30%が貯蔵鉄。
・1日の食事中の鉄量は約10mgであり、そのうち1mgのみ吸収される。
・鉄は便、尿、汗などで1日1mg排泄される。
・女性の場合は月経のためさらに1日あたり0.5〜1mgが失われる。


(1日食事より吸収量1mg)−(1日排泄量1mg)−(月経による喪失1日換算で0.5mg〜1mg)=−0.5mg〜−1mg

ゆえに女性の場合、普通に食事をしていても1日に約0.5mg〜1mgの鉄が失われてしまうことになる。

体内の鉄の分布

男 80kg(mg) 女 60kg(mg)  (%)
ヘモグロビン鉄 2,400 1,700 65
貯蔵鉄(フェリチン、ヘモシデリン) 600−1000 0−300 30
ミオグロビン 150 120 3.5
酵素(シトクロム、カタラーゼなど) 150 120 3.5
血清鉄 3 3 0.1

貧血の診断

体内の鉄の分布

小球性(MCV<80fl) →フェリチン低下(<30μg/l) →鉄欠乏性貧血
→フェリチン増加 →血清鉄低下 →ACD(anemia of chronic disease)
→血清鉄増加 →鉄芽球性貧血
正球性(80<MCV<100) →網赤血球増加 →クームス陽性 →自己免疫性溶血性貧血
(急性出血後貧血以外) →クームス陰性 →遺伝性球状赤血球症(形態異常あり)
→発作性夜間血色素尿症(形態異常なし)
→網赤血球低値(*) →エリスロポエチン低値 →腎性貧血
→網赤血球低値 →エリスロポエチン正常 →再生不良性貧血、白血病
大球性(MCV>100fl) →網赤血球増加なし →ビタミンB12低下 →巨赤芽球性貧血
→ビタミンB12欠乏性
低下なし →アルコール中毒
(*)網赤血球比率の校正→網赤血球×Hb/15×1/maturation time
 (1999 Wintrobe's Clinical Hematology ; The anemia diagnostic atrategy)

鉄欠乏性貧血の治療

・自覚症状がなくても治療の適応になる。
・治療のゴールは貧血を治すだけでなく、貯蔵鉄(フェリチン)を正常化させること。
・隠れ貧血に注意。女性のヘモグロビン値の下限は11.5g/dlとされているが、貯蔵鉄が少ないとさらにヘモグロビンが低下する場合がある。貯蔵鉄が少ない場合、ヘモグロビン値を12g/dl未満は貧血と考える。

1.経口鉄剤
テツクールS 100mg  1日1〜2回 食前に内服(悪心などの症状があるときは食後でも可) 薬価 9.4円(自己負担は約3円)/錠 貯蔵鉄(フェリチン)正常化するまで服用する(約6〜12ヶ月)
空腹時に服用。摂取量の薬10分の1が吸収される。悪心、食欲低下の副作用がある。

2.注射用鉄剤
フェジン 40mg  経口薬剤による副作用が問題になると考えられるときに点滴、または緩徐静脈注射を行う。投与総量を計算し、計画的に投与する。投与総量=2.3*(15−Hb)*体重+500mg or 1000 mg (貯蔵鉄として)→ 10回に分けて点滴(所要時間は15分程度です)
Harrison's Int.Medicine 16th edition pp.586-592

3.除外診断

鉄欠乏性貧血の原因を確定するために@婦人科疾患の有無、A便潜血の有無を確認する。

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